【前立腺肥大に抗コリン薬?】前立腺肥大と過活動膀胱についてガイドラインを読んで考えてみた!

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医薬品

どうも、シンパパ薬剤師Kです。

皆さん、前立腺肥大と過活動膀胱の関係性についてしっかりと理解されていますか?
僕は学生時代に「排尿障害の前立腺肥大、頻尿の過活動膀胱」というイメージを持っていたので、対になる疾患だと勘違いしてました。

実際は、前立腺肥大により過活動膀胱が発症してしまう事もある近い関係性を持った疾患です。
「前立腺肥大に抗コリン薬はダメ」と学生時代に勉強しましたよね。
しかも抗コリン薬の添付文書には「排尿障害のある前立腺肥大症の患者は禁忌」と記載があります。

ですが、前立腺肥大に併発する過活動膀胱に対して抗コリン薬を投与するケースもあるので「なぜ前立腺肥大に抗コリン薬が処方されるのか」などをガイドラインに沿って解説していきます。

以前、α1遮断薬の比較について記事にしているので良かったらどうぞ。

【α1受容体遮断薬】タムスロシン・シロドシン・ナフトピジルの違いとは
【α1受容体遮断薬】タムスロシン・シロドシン・ナフトピジルの食事の影響や受容体への親和性などを解説しています。

前立腺肥大

前立腺肥大について

前立腺肥大症は前立腺が肥大することにより排尿障害を生じる疾患です。

前立腺の肥大には男性ホルモンが関与していると考えられ、高齢男性では高い確率で前立腺の肥大が見られます

肥大化した前立腺は尿道を圧迫し排尿障害を起こします。これが前立腺肥大の代表的な症状です。
その排尿障害によって残尿や尿道抵抗が増え、対償的に膀胱の活動が活発になり蓄尿障害(過活動膀胱)が起こります

K
K

おしっこが出ないから膀胱からおしっこが減らない → すぐ膀胱が満タンになって頻繁に尿意があらわれる

前立腺肥大によって過活動膀胱がおきる理由のひとつを簡単に説明するとこんな感じです。

前立腺がんではないことを確認する

前立腺肥大症の治療には前立腺がんではないことをを確認するのが重要です。
直腸内指診やPSAでは、どちらとも言い切れない場合があります。前立腺生検で前立腺がんの確定診断が出来ます。

α1受容体

α1受容体は、前立腺肥大による排尿に大きく関わる受容体です。
α1受容体は3種類あり、前立腺にはα1A受容体とα1D受容体が多く分布し、血管平滑筋にはα1B受容体が多く分布しています。前立腺肥大になるとα1A受容体の割合が更に増加します

前立腺の治療薬

前立腺肥大の治療薬は、α1受容体遮断薬5α還元酵素阻害薬PDE5阻害薬抗アンドロゲン薬などがあります。

α1受容体遮断薬(シロドシンなど)PDE5阻害薬(ザルティア)排尿障害の対症療法として使われます。
5α還元酵素阻害薬(アボルブ)抗アンドロゲン薬(クロルマジノン)肥大した前立腺を小さくする効果があります。

前立腺が30ml以下の場合は、α1受容体遮断薬(シロドシンなど)PDE5阻害薬(ザルティア)が推奨度Aで第一選択として考えられています。

対して前立腺の体積が30mlを超えている場合は、前立腺が小さくなることを期待して5α還元酵素阻害薬(アボルブ)が推奨度Aで第一選択です。

タイトルにあります「前立腺肥大に対する抗コリン薬」ですが、前立腺肥大によって生じた蓄尿障害(頻脈や尿意切迫感)がα1遮断薬で改善されなかった場合に推奨されています。
投与する場合は、排尿障害の悪化を考慮して通常量の半分量が推奨されています
半分量の方が通常量より蓄尿障害の改善が見られ、かつ排尿障害の悪化などのリスクは通常量でのみ観察されたデータもあります。

過活動膀胱

過活動膀胱とは、頻尿・尿意切迫感・夜間頻尿を主症状とする疾患です。
主に尿が溜まりきる前に膀胱が収縮してしまう事で症状があらわれます。
前立腺肥大による過活動膀胱は、排尿が少ない為にすぐ膀胱がいっぱいになってしまう事尿道抵抗の上昇により対償的に膀胱が過剰に活動してしまう事で頻尿などがあらわれます。

膀胱平滑筋にはβ3受容体が分布しており、β3受容体を刺激すると膀胱が広がり尿道が閉じます。
β3作動薬のベタニスとベオーバの作用点はここですね!

過活動膀胱の治療

過活動膀胱の治療方針は性別と年齢を考慮して①女性②50歳未満の男性③50歳以上の男性の3つに分けられます。

女性に対してはβ3作動薬が推奨されます。
排尿障害が混在する場合は抗コリン薬の投与も推奨されています。

50歳未満の比較的若い男性の過活動膀胱には、神経疾患や前立腺炎が背景にあることが考えられるので専門医に検査してもらいましょう。

50歳以上の男性は、前立腺肥大による過活動膀胱が考えられます
排尿障害や前立腺の肥大が確認出来た場合は、α1受容体遮断薬(シロドシンなど)PDE5阻害薬(ザルティア)を最優先します。
それでも過活動膀胱が改善しない場合は、抗コリン薬やβ3作動薬も考慮しますが排尿障害の悪化や尿閉のリスクがあるので慎重に検討する必要があります。

まとめ

・前立腺の大きさによって治療薬の選択が変わる
・前立腺体積が30ml未満の場合、α1受容体遮断薬かPDE5阻害薬で対症療法
・前立腺体積が30ml以上の場合、5α還元酵素阻害薬か抗アンドロゲン薬で前立腺の縮小を狙う
・前立腺肥大による過活動膀胱には抗コリン薬を通常量の半分量で使うことがある
・過活動膀胱の治療は、①女性②50歳未満の男性③50歳以上の男性の3つに分けて考える
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