【抗精神病薬Vol3】MARTAのまとめ!受容体への親和性や各薬剤の注意事項

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どうも、シンパパ薬剤師Kです。

今回は抗精神病薬Vol3という事で、MARTAについてまとめていきます。

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MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)とは

MARTAは様々な受容体に作用する薬で、主に統合失調症の治療薬として使われます。
D2受容体遮断で陽性症状を、セロトニン5-HT2受容体遮断で陰性症状を改善させます。
この他、アドレナリンα1受容体やH1受容体、ムスカリン受容体に作用することで様々な効果が期待でいます。

統合失調症治療におけるSDAとの使い分け

錐体外路症状や血糖異常などに対する忍容性を考慮して使い分けられることがあります。
SDAはMARTAに比べて錐体外路症状が出やすいので、錐体外路症状が出てしまう患者さんにはMARTAを選び、肥満体型や血糖が気になる患者さんにはSDAの方が選ばれます。

その他には「症状幻覚や妄想にはSDAを使い、鎮静にはMARTAを使う。」なんて使い分けもするようです。

オランザピン/ジプレキサ

オランザピンの適応症は統合失調症の他に双極性障害、抗がん剤に伴う消化器症状で、MARTAの中で一番広く適応を持っています。

用法はすべて1日1回ですが、細かなところで違いがあります。

・統合失調症
5~10mgを開始量として1日1回経口投与。
維持量は1回10mgで、症状により適宜増減。MAX20mg

・双極性障害における躁症状の改善
10mgを開始量として1日1回経口投与。
症状により適宜増減。MAX20mg

双極性障害におけるうつ症状の改善
5mgを開始量として1日1回就寝前投与。
その後10mgに増量。症状により適宜増減。MAX20mg

抗がん剤投与に伴う消化器症状
他の制吐剤をの併用において、5mgを1日1回経口投与。
患者の状態により適宜増減。MAX10mg

抗がん剤の吐き気止めに使うときの注意

原則としてコルチコステロイド、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬などと併用して使います。
また、抗がん剤投与前にジプレキサを開始し、抗がん剤治療の各サイクルにおけるジプレキサの投与期間は6日間までを目安とします。

食事の影響なし

アセナピン/シクレスト

シクレストは2016年発売の新しい薬です。
適応は統合失調症のみです。

用法
統合失調症
1回5mgを1日2回を開始量として、1回5mg1日2回を維持量とする。
最大量を1回10mg1日2回。年齢、症状によって適宜増減。

中等度以上の肝障害の患者には注意が必要ですが、腎障害については添付文書に記載が無いので使用可能だと思われます。

この薬の特徴は舌下錠という点と糖尿病患者にも使える点です。
なかなか珍しいですよね。この舌下錠という剤形上、吸収はめちゃくちゃ速いんですが、T1/2は長いので安定した効果を期待できる一方、舌下錠の使用感が合わず処方変更に至るケースもあるそうです。

シクレストが作用する受容体をみると、オランザピンとも少し違ってSDAよりの作用を示します。

クエチアピン/セロクエル、ビプレッソ

クエチアピン製剤はセロクエルとビプレッソという2種類の薬が販売されています。
それぞれ適応症、用法が異なるので軽く比較していきましょう。

セロクエル

セロクエルは統合失調症に使われます。

・統合失調症
1回25mgを2回また3回から開始して徐々に増量。
通常、1日150~600mgを2回または3回に分けて経口投与する。
高齢者や肝障害患者には少量から始め、1日増量幅も25mg~50mgなどにするなど慎重に使う。

1日2~3回服用で、他のMARTAに比べて効果がマイルドです。
錠剤の規格も多く微調整できる点が強みです。
食事の影響もありません。

ビプレッソ

ビプレッソは双極性障害のうつ症状に使われます。

・双極性障害のうつ症状
1日1回就寝前食後2時間以上あけて服用する。
通常1回50㎎より投与開始、2日以上の間隔をあけて1回150mgへ増量。
更に2日以上の間隔をあけて推奨用量である1回300mgへ増量する。

ビプレッソは食後に服用すると血中濃度が高くなり、消失半減期が若干短くなるというデータがありますので食事から時間を空ける必要があります。
セロクエルの徐放性製剤がビプレッソですが適応症が違います
1日最大量も少なめでセロクエルとは違います。

何か効き方が違うという訳ではなく、単に別の薬として作られただけです。
しかもどっちもメーカーはアステラス製薬、「セロクエルCR」的な名前じゃ駄目だったんでしょうかね、、、(笑)

副作用の比較

ジプレキサの副作用は承認時で70~80%程度ですが、使用成績調査では19~38%程度です。
発現が多い副作用は傾眠と口渇です。

シクレストの副作用は承認時で66.2%です。傾眠は12.9%、一番発現率が高いものでも傾眠12.9%、嘔吐10.9%と思ったより高くないです。

セロクエルの副作用は承認時62.50% 使用実績調査26.68%です。
主な副作用は傾眠(14.2%)や不眠(19.3%)の睡眠障害です。口渇や排尿障害は限りなく少なく抗コリン作用の弱さが裏付けされていますね。

ビプレッソの副作用は承認時で84.2%です。
思ったより発現率が高いですね。1回量が多いから?
不思議なことにセロクエルとは異なり、口渇(23.7%)や消化器症状も多いです。
クエチアピンはムスカリン受容体への作用が弱いのでこれは意外でした。

使い分けは?

シクレスト インタビューフォーム/Meiji Seika ファルマ株式会社 より抜粋

統合失調症で使われるジプレキサ、シクレスト、セロクエルの3つの使い分けは極論何が合うか、処方医の使用だと思いますが、それじゃつまらないですよね。

薬の効果としてはジプレキサ≒シクレスト>セロクエルって感じです。
シクレストが選ばれるのは糖尿病患者へ使えるという点と抗コリン作用が弱いという点でしょうか。

セロクエルは作用が弱く微調整が出来るので好んで使われるケースも多い気がします。
少なくともうちの薬局ではセロクエルが一番多く出ています。結構細かく微調整されてるイメージです。
どれも肝臓がメインの代謝経路なので肝障害、腎障害で使い分けるわけではないと思います。

受容体への親和性は、ドパミン受容体 と アドレナリンα受容体 と セロトニン受容体 と ヒスタミン受容体に対してはシクレスト>ジプレキサ>セロクエルで、
ムスカリン受容体に対してはジプレキサ>セロクエル>シクレストです。

個人的な考えを簡単に説明すると、ジプレキサに忍容性があればジプレキサ、抗コリン作用や糖尿病が問題であればシクレスト、微調整が必要であればセロクエルというような感じでしょうか。

なんだかんだ抗精神病薬は、患者が服用して良い感触があるかないかなので正解はないのかとは思っています。

薬剤師としては、糖尿病であったり抗コリン作用によるSEなどに注意して服薬指導が出来たらよいと思います。

簡単なまとめ

・どれも肝代謝がメイン
・親和性はD受容体・α受容体・5-HT受容体・H受容体に対してはシクレスト>ジプレキサ>セロクエルで、M受容体に対してはジプレキサ>セロクエル>シクレスト
・ジプレキサはどの受容体へもそれなりに作用する
・セロクエルは全体的に作用が弱いが微調整可能
・シクレストは糖尿病患者へ投与可能で、抗コリン作用も弱い
・抗精神病薬は患者に合うかどうかが重要で、間違い(禁忌)はあるが正解は無い

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