先日糖尿病患者のジャディアンス10㎎からフォシーガ5㎎へ処方変更した例がありました。
何故処方が変更されたのか考えてみましょう。
用法を考えてみる
まず同種同効薬への変更で僕が真っ先に考えるのは、副作用の発現と服薬コンプライアンスの問題、併用薬との飲み合わせです。
糖尿病を含む、いわゆる生活習慣病の患者は服薬コンプライアンスが悪い傾向があるので出来るだけ服用タイミングを合わせて服用する回数を減らすことはとても重要な事だと考えています。
今回のケースですと、ジャディアンスとフォシーガの2剤はどちらも1日1回の薬ですが、ジャディアンスは朝食前後という縛りがある一方、フォシーガは1日1回ならいつでも大丈夫という違いがあります。
ですので「他の薬剤が夕食後」とか「朝は忙しくて飲み忘れる」っていう患者さんだとフォシーガを夕食後に飲むという方が飲み忘れが少なくなると考えられますね。
ただ、今回うちが対応した患者さんは他のお薬も朝食後でフォシーガの朝食後だったのでこれが変更理由という線はなさそうです。
代謝経路を考えてみる
では次に代謝経路について考えてみましょう。
糖尿病患者の場合は、3大合併症に糖尿病性腎症が挙げられるように腎機能が低下していく可能性が高いです。
ですので、糖尿病患者の処方が変更された場合には腎機能低下による処方変更という可能性を常に頭に入れておきましょう。
フォシーガは殆どが肝臓で代謝され、尿によって約70%排泄されます。
ジャディアンスはフォシーガほど代謝されず、尿によって約40%排泄されます。
これらを踏まえると代謝経路を考慮した処方変更というのも考えにくいです。
強さを考えてみる
次に強さを考慮して変えた可能性を考えてみます。
以前SGLT-2阻害薬を比較した記事でも書いたのですが、試験データ見る感じですとジャディアンス>フォシーガっぽいんですよね。
しかも今回のケースだと少なからずフォシーガに変えたから血糖が良くなる!っていうを期待して変更したとは考えにくいです。
というのも強い効果を期待しているのであればまずジャディアンスを25㎎に増量すべきだと思いませんか?
これが25㎎に増量した後に他のSGLT-2阻害薬に変えているのなら「25㎎でも思ったような効果が出なかったのかな?」と思えるのですが、ジャディアンス10㎎からフォシーガ5㎎とどちらも低用量なので血糖降下作用を強めたい訳ではないかなと僕は解釈しました。
適応を考えてみる
最後に適応について考えてみましょう。2022年7月現在の適応は下記の通りです。
<ジャディアンス>
・2型糖尿病
・慢性心不全
<フォシーガ>
・2型糖尿病
・慢性心不全
・慢性腎臓病
現在SGLT-2阻害薬でフォシーガのみ慢性腎臓病の適応を持っています。
何か確信があるわけではなくて、明確に2剤の違いがあるとしたらここくらいしか分からなかったってのが正しい表現かもしれません。
腎保護作用を期待しての変更なのかなって思うくらいしか理由付けが出来ませんでした。
なのでここが今回の処方変更理由なのではないかと思いました。
ただ、この推察にもツッコミどころがありまして、フォシーガを慢性腎臓病に使う場合は10㎎なんですよね。しかもジャディアンスもまだ適応追加されていないだけで慢性腎臓病に対する試験が進んでいます。さらにさらにジャディアンスの慢性腎臓病に対する用量も10㎎なので処方変更前の用量なんですね。
つまり、「腎保護作用を目的にしているのであればジャディアンス10㎎で良かったよね。」ってことなんですよね。ん~処方医の意図を読むのは難しい。。
在宅患者さんの処方なので担当薬剤師に答えを聞いたら追記しますね。
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