どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今日は心疾患でしばしば用いられるNaチャネル遮断薬についてまとめていこうと思います。
Naチャネル遮断薬の作用機序
Naは心筋の活動電位を立ち上げる役割を担っています。
Naチャネル遮断薬は、Naチャネルを遮断することで細胞内へNaが入ってくることを抑制し、心筋の活動電位の立ち上がりを抑制します。
それにより心筋内の興奮伝達速度に遅れが生じ、頻脈性不整脈の発生を防いでくれるというのがNaチャネル遮断薬の主な作用機序です。
Naチャネル遮断薬の分類と特徴
不整脈治療薬は、「Vaughan Williams分類」と「Sicilian Gambit分類」によって分けられます。
薬剤師国家試験では「抗不整脈薬はVaughan Williams分類!」って感じで勉強するのですが、Sicilian Gambit分類は日本の心房細動ガイドラインに記載があります。
Vaughan Williams 分類
Vaughan Williams分類においてNaチャネル遮断薬はⅠ群に分類されます。
その中で更に活動電位時間への影響でⅠa群、Ⅰb群、Ⅰc群の三つに分けられます。
Ⅰa群
Ⅰa群は活動電位時間を延長する特徴がありキニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、シベンゾリンなどが分類されています。
Kチャネル遮断作用も併せ持つことにより活動電位時間を延長します。
不応期が延長するので異常な電気的刺激による不整脈にも効果を発揮します。
Ⅰb群
Ⅰb群は活動電位時間が短縮する特徴がありリドカイン、メキシレチン、アプリンジンが分類されています。
他のNaチャネル遮断薬と比べて心筋収縮力低下作用が弱く、比較的催不整脈作用は弱いとされています。
Ⅰb群は、Ⅰa群&Ⅰc群と違い上室性不整脈には使われません。
Ⅰc群
Ⅰc群は活動電位時間に影響を与えません。
フレカイニド、ピルシカイニド、プロパフェノンが分類されています。他のNaチャネル遮断薬に比べて抗不整脈薬作用は強いのですが、心機能が低下している患者さんに使うと死亡率を増加させてしまう恐れがあるので、心機能が良好の場合に使われます。
発作性心房細動に第一選択として使われますが、心房粗動に使う場合はβ遮断薬などでレートコントロールしてから投与する事が望ましいと言われています。
Sicilian Gambit分類
日本の心房細動ガイドラインに載っているSicilian Gambit分類ですが、アメリカなどの諸外国のガイドラインでは全く触れられていなかったりするようです。
Vaughan Williams分類に比べてSicilian Gambit分類は作用するチャネルや心臓への影響を細かく表にしているので患者さんの状態や目的に対してどの薬剤が適しているか分かりやすく分類されているのに、諸外国ではガイドラインに載っていません。
その理由として、動物実験の結果だけの分類で人間を対象にした時に必ずしも当てはまる訳ではないという事が挙げられています。なのでこれまでのエビデンスとVaughan Williams分類を基に治療が行われる事が多いそうです。
じゃあ違いをどう考える?
そもそもNaチャネル遮断薬は催不整脈作用が強いのであまり優先度の高い薬剤ではありません。
ですが、昔から使われているので今現在も良く処方される先生方もいらっしゃいます。
先程説明したふたつの分類からなんとなく薬剤ごとの特徴が分かると思います。
これらを踏まえて各病院の採用であったり処方医の経験で処方されていると思われます。
基本はVaughan Williams分類→Sicilian Gambit分類で考える
先述した通り日本の心房細動ガイドラインではSicilian Gambit分類推しですが、諸外国や国内の臨床レベルだとVaughan Williams分類で考えられている状況だと思われます。
勿論Vaughan Williams分類が全てではありませんので、それ以外の複合的な因子を考慮した上で処方されていると思います。
ですので、Vaughan Williams分類で薬剤の特徴を確認してからSicilian Gambit分類で更に細かい特徴を理解すればある程度の処方意図は汲み取れると思います。
メキシレチン(Ⅰb群)とフレカイニド(Ⅰc群)を例に考えてみる
Ⅰc群のフレカイニドは催不整脈作用が強いので心臓に器質的な障害がある場合は使えません。
ただ、Naチャネル遮断作用は強くて切れ味のある効果を発揮するので心機能が保たれた発作性心房細動などには第一選択で使われます。
一方、Ⅰb群のメキシレチンは作用がマイルドで心臓の負担にもなりにくい薬剤です。
なのでフレカイニドが処方されている場合は、心臓は器質的な障害が無い割と元気な状態だと判断できますね。
もし途中でメキシレチンなどのⅠb群に変わったりしたら心臓に器質的な障害が出てきた可能性があります。
逆に心房細動が落ち着いているから催不整脈作用が強いフレカイニドからマイルドなメキシレチンに変えたという可能性もあるので患者さんに聞き取りするのは必須ですね。
普段こういう風に考察はしていますが、処方医によって全然違う意図を持っているので考察が外れる事もあります。
ですが、ぼくは沢山考えて沢山考察を外して勉強していくことが大事だと思っています。
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