どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今日は鬱に良く用いられるSSRIについてかみ砕いていこうと思います。
最近は鬱などの精神疾患がようやく世の中で蔑ろにされないようになってきたなと感じています。
心療内科や精神科に受診することのハードルが下がってきていますね。
ストレスの中で戦っている方々にとって凄く良い傾向だと個人的には感じています。
うちの薬局では精神科の処方箋を取り扱うことが多いので整理してみようと思います。
鬱病と双極性障害(躁鬱病)
普段薬局で対応する中で、お薬のヒントなしにその患者さんが鬱病か双極性障害(躁鬱病)か判断ってつきますか?
正直難しいですし、結構無理な話ですよね。
恐らく、躁状態の時はそれが病気の症状だと気づかない患者さんもいると思います。
きっと「なんか調子良いな」程度にしか思わないです。
なのでそういう方は先生にも躁状態の事は話さないでしょうし、薬剤師にも話さないでしょう。
精神疾患の患者さんにお薬を渡すときは、あまり深い話をして良いのか非常に葛藤します。
そんな中、細かい事まで教えてくれる患者さんって少ないです。
対応した際の声のトーンや表情などをしっかり薬歴に残しておく必要があると感じています。
それだけでも、症状に波があるのかどうか多少把握できると思います。
いつもは返事しかしないのに急に話してくれるようになった場合は、本当に良くなっているのか、それとも躁状態なだけなのか慎重に判断する必要があります。
双極性障害にSSRIはあまり推奨されていない
鬱病か双極性障害か慎重に判断する必要があるのは、双極性障害のうつ症状に対してSSRIがあまり推奨されていないという背景があります。
双極性障害のうつ症状にSSRIを併用しても有意差がない試験結果や、躁鬱症状の躁転などがあるため出来る限り使用を控えるといった考えがあります。
SSRIは18歳以下に使用するのは注意が必要
SSRIの添付文書には、18歳未満の患者に使う場合の注意が記載されています。
海外のデータではありますが、18歳未満の患者に対して効果がなかったという報告があるためですが、日本国内では「効果の実感があるなら無理に使用をやめる必要もない。」という考えもあるようです。
しかし、SSRIの服用により自殺企図や攻撃性が副作用として報告されているので、やはり18未満には使わないほうが良さそうですね。
小児へのSSRIの使用は基本保険外の治療になります。
保険適応はないですが、添付文書には使用する注意が書かれています。
パキシル(パロキセチン)
パキシルは1日1回夕食後服用です。
素錠とCR錠があり、どちらも開始用量が設定されており徐々に増量するお薬です。
素錠は10~20㎎、CR錠は12.5㎎で開始して、1週間以上の間隔で増量します。
増量は素錠10㎎毎、CR錠は12.5㎎毎になります。
CR錠の副作用発現率は日韓共同二重盲検比較試験において65.2%で、吐き気や眠気、口渇、便秘が多いです。
素錠の副作用発現率は承認時には68.5%でしたが、使用成績調査結果では22.4%でした。主な副作用の内容は変わりないです。
AUCは素錠20㎎とCR錠25㎎が同じくらいです。
運転に関しては「車の運転をする場合は充分注意させること」と記載あり。
ルボックス(フルボキサミン)
ルボックスは1日2回服用です。
ルボックスも初期用量が決められていて増量していきますが、増量のペースの記載はありません。
容認性を見ながら医師の裁量で増量可能です。
開始量は1日50㎎で1日150㎎まで増量、適宜増減となってます。
併用禁忌に、テルネリンとロゼレムがあるので注意が必要です。
パキシルと違い、「運転させないように注意すること」となっているので服用中は運転できません。
副作用に関して、添付文書には全体の発生頻度が載っておらず、インタビューフォームに記載がありました。
承認時の副作用発現率は42.98%で、パキシルと同様に吐き気や眠気、口渇、便秘が多いです。
使用成績調査結果では20.44%でした。
余談ですが、SSRIでルボックスだけ何故か劇薬ではなく普通薬です。
めちゃくちゃどうでも良い事なんですが。。(笑)
ジェイゾロフト(セルトラリン)
ジェイゾロフトは1日1回で、25㎎から開始します。
パキシルと違い、服用のタイミングに指定はなく1日100㎎を超えないように適宜増減する薬です。
運転に関してはパキシルと同様で運転可能です。
副作用発現率は承認時では59.6%でしたが、使用成績調査結果では11.9%とSSRI内ではかなり低い結果になっています。
T1/2が26時間程度とかなり長く体内動態の変化が大きくない事が副作用発現率に影響あるのかもしれません。(同じ1日1回のパキシルCRのT1/2は13時間程度)
レクサプロ(エスシタロプラム)
レクサプロは1日1回夕食後で開始量がありません。
初めから治療量で服用可能です。増量する場合は1週間以上の間隔で20㎎を超えないようにする。
レクサプロは添付文書に、12歳未満の投与に関する注意事項があります。
他の薬は18歳未満への投与の有益性が無いので18歳未満への注意がなされていますが、レクサプロの場合12~17歳で有益性が確認出来ています。
ただし、残念ながら用法用量に「通常成人には」と記載があるため、小児適応はないです。
保険外の治療になってしまいますが、小児への効果が確認されている唯一のSSRIです。
ちなみに運転は可能です。
使用成績調査結果での副作用発現率は15.8%です。主な副作用は他のSSRIと特に変わりないです。
CYP2C19が代謝に大きくかかわり、CYP2C19のEMとPMで体内動態に大きな差があります。
EMのAUCはPMの倍程度あります。個人差がかなり出てしまうので注意が必要です。
まとめ
・パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロは1日1回で運転可能、パキシルとレクサプロは夕食後
・ルボックスは1日2回で運転不可
・ルボックスはテルネリンとロゼレムと併用禁忌
・SSRIは開始量が設定されているが、レクサプロは維持量で始められる
・SSRIのうち、レクサプロだけは12~17歳にも効果がある
・レクサプロはCYP2C19で代謝されるため、効き目に個人差がある
・SSRIの治療効果は大きな差はない
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