どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今日はクラリスロマイシンを初めとしたマクロライド系の抗生物質とベルソムラやトリアゾラムなどの睡眠薬の併用について勉強したことをご紹介しようと思います。
有名なベルソムラとクラリスロマイシンの併用禁忌
薬剤師を初めて最初に教えてもらう併用禁忌の内のひとつですね。
薬剤師の先生方はほぼ全員知っているんではないでしょうか?
クラリスロマイシンのCYP阻害作用によってベルソムラの代謝が遅延してAUCが2.3倍にもなるため併用禁忌となっています。
ベルソムラはベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べて依存が少なく安全な印象のベルソムラですが、血中濃度が高まれば当然副作用の危険性が高まります。
クラリスロマイシンは臨時で出る薬なので「クラリスロマイシンが出てる!注意しよう!」ってアンテナを張る必要がありますね。
ベルソムラを変更する?クラリスロマイシンを変更する?
「ベルソムラ×クラリスロマイシンがダメ」という事に気付いたとして、何を提案しましょう?
他の睡眠薬に変えますか?それとも抗生剤を変えますか?
僕個人の考えでは優先度は抗生剤の方が高いのではないかと思っています。
睡眠薬は患者の拘りが強くなりがちな薬ではありますが、抗生剤は菌に有効なものをチョイスしないと意味がありません。
抗生剤は他の薬剤に比べて患者の「こっちがいい!」という希望より適正な使用を何よりも優先すべき薬剤だと思っています。
Drが必要だと判断した抗生剤をベルソムラと併用可能な抗生剤に変えて除菌作用が弱くなる可能性を考えると、抗生剤を服用する間だけでも他の眠剤を試すか睡眠薬をOFFした方が良いんじゃないかなあと思います。
ベルソムラじゃないと眠れないんです!!
っていう患者さんは少ないでしょうし、仮にそうである患者さんに対して僕は「とりあえずクラリスロマイシン飲んでる間はベルソムラ飲むの止めたら?」って考えです。
個人的な考えですので「いやーそんなことないだろ」って意見もあると思います。
僕も自分の考えが絶対あってるとは全く思ってないのでご安心ください。
他の睡眠薬とクラリスロマイシンの併用は大丈夫なのか
ベルソムラ以外の睡眠薬は、添付文書上ではクラリスロマイシンと併用禁忌になってはいませんが注意が必要です。
前述しましたが、クラリスロマイシンと併用禁忌であるベルソムラはAUCがおよそ3倍になります。
クラリスロマイシンと併用できるベルソムラの改良版のように出てきたデエビゴのAUCはクラリスロマイシンと併用することでなんと約3倍にもなります。
この2剤は睡眠薬全体をみると処方量も多くなく、実際併用されるケースはたまに見かけることがあるくらいのものですが、トリアゾラム(商品名:ハルシオン)やブロチゾラム(商品名:レンドルミン)、エチゾラム(商品名:デパス)は処方量が多いので併用されているケースに出くわすことはそれなりにあるんじゃないかと思います。
トリアゾラムやブロチゾラムはクラリスロマイシンと併用禁忌ではないのですが、併用することでAUCが増加することが知られています。
〜クラリスロマイシンとの併用によるAUCの変化〜
・トリアゾラム:約5倍
・ブロチゾラム:約4倍
・デエビゴ:約3倍
・ベルソムラ:約2.3倍(併用禁忌)
・ゾピクロン:約1.6倍
・エスゾピクロン:約1.6倍
・ゾルピデム:約1.5倍
・エチゾラム:約1〜1.5倍
トリアゾラムやブロチゾラムはCYP3A4寄与率が高いのでかなり影響を受けてしまいます。
ですが、併用禁忌ではないので「忍容性が高いのかなあ」なんて考えたのですがトリアゾラムは高齢者の上限が通常より低く設定されている(通常0.5mg・高齢者0.25mg)ことを考えると「5倍になっても大丈夫」ってことはないと思われます。
クラリスロマイシンを併用している場合は上の表のゾピクロン以下をチョイスするのが良いと思います。
表で挙げた薬に比べてメジャーではないので今回取り上げてはいませんが、リスミーはCYP3A4の寄与が少ないので併用に問題ありません。
デエビゴは使わないほうが良いのか?
結局デエビゴは使えないのか?というとそんなことはありません。
デエビゴは通常5mgなのですが、CYP阻害薬併用時の為に2.5mg錠が用意されています。
CYPの寄与率はAUCが3倍になる計算ですが、色々試験した結果2.5mgになったと思うのでそのあたりは気にしなくて良いのかなと思っています。
上記の事からベルソムラじゃないと眠れないという患者さんであればデエビゴ2.5mgに変更するのが良いかと思います。
クラリスロマイシンとの併用を気にするのはベルソムラだけじゃない
クラリスロマイシンと併用禁忌なのはベルソムラですが、他の睡眠薬でも充分な注意が必要となってきます。
睡眠薬の過剰な効果は大きなリスクを伴います。
運転をする方であれば交通事故、高齢者であれば転倒による骨折など「不眠解消」に対して大きすぎるリスクだと思います。
交通事故の事の大きさは敢えて語る必要もないですが、高齢者の骨折は思ったより深刻です。
一度寝たきり状態になったら高齢者は元の状態に戻すことは困難ですし、ご家族の負担になります。
実際に家族が骨折して入院もさせられず仕事に行けなくて困っているご家族からの相談もありました。
薬剤師として処方変更を提案できる場面は限られていますが、禁忌でなくてもAUCが5倍にもなるブロチゾラムはDrに用量相談してもいいのではないかと思います。
処方元のDrとの関係性にもよりますが、薬剤師として動くべき場面はしっかりと動けるようになりたいですね。
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