どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今回お話しするのは「薬剤師として知っておいて損しない知識」であって、「日常的に患者さんに提供できる知識」ではないという事を前提に読んで頂くようお願いいたします。
薬の服用タイミング
お薬は食後に飲むイメージが強いですが、様々な飲み方があります。
食前や食後は食事といった分かりやすい目安があるのですが、空腹時投与や食間は食事を避けて日常生活の中に組み込まないといけないので意外と飲み忘れが多いと思います。
食事の影響で吸収が遅くなったり低下する薬剤は食後はもちろん、食前に服用するのも適していません。
その為、就寝前で処方されることが多いです。
ここで問題なのが「夕食から寝るまでに充分な時間が取れない」場合です。
本来、空腹時投与の薬を飲む場合は食後2時間程度の時間を空けたいのですが、帰ってくるのが遅かったり疲れていて早く眠るときに2時間空けられない日も出てくると思います。
今回は空腹時投与のビラノアについて添付文書とインタビューフォームを少し読んで分からないメーカーに問い合わせたので分かった事を共有しようと思います。
食後投与でAUCとCmaxが大きく下がる
ビラノアは20mgを1日1回空腹時投与の薬剤です。
僕の勤める薬局ではよく就寝前で処方が来ます。
たまに夜ご飯の後すぐ寝ちゃう時とか、飲まずに寝ちゃったときとかがあるんですけどそういう時はどのタイミングで飲めばいいですか?
なんて質問があったりするので僕は
生活リズムが崩れる事ってありますよね。
食後に時間取れないときも寝る前に飲んで大丈夫です。
飲み忘れたら次の日のお昼前なら気づいたときに飲んでください。
お昼過ぎてたらその日の寝る前から再開してください。
って答える事が多いです。
アレルギー性鼻炎や蕁麻疹なのでご自身が我慢できるのであれば、多少の飲み忘れで命に影響が出る物ではないので患者さんに飲み忘れのプレッシャーを与えないようにお話しするようにしています。
ですが、ビラノアの吸収は食事の影響を大きく受けます。
食後に投与すると空腹時に比べてAUCは6割に、Cmaxは4割に低下してしまいます。
食後投与でも効果は出る
食後のAUCとCmax、結構な低下率ですよね。
普通に考えるとこれだけ下がったら効果でる?って心配になりませんか?
インタビューフォームに通常量の半分である10mg投与時の臨床データが載っていたのでご紹介いたします。
スギ花粉暴露の総合鼻症状スコア(TNSS)
慢性蕁麻疹に対する効果の評価
インタビューフォームの臨床成績を見る限り、10mg投与と20mg投与の間に有意差は認められなかったとのことです。
つまり、食後に20mg投与してAUCが6割になっても空腹時に10mg投与した時のAUCより高いはずなので、食後投与でも効果は期待できると予想できます。
ただこの考察は患者さんにむやみ伝える内容ではなく、薬剤師としてアドバイスする時に使う知識としてご活用いただきますようお願いいたします。
なんで10mgじゃなくて20mgなの?
ここまでのお話で「10mgで効果出るならなんで通常量は20mgなの?」って疑問も出てきますよね。
これに関してはメーカーに問い合わせました。
問い合わせて得た回答が以下の通りです。
・効果の発現は20mgの方が早い ・海外のデータは殆ど20mgのデータ ・元々眠気が少ない(0.6%)薬剤の為、10mgと20mgに副作用などの安全性に違いがない
効果発現に関してはインタビューフォームにデータがあるので画像で紹介します。
初回の効果発現時間は表のとおり20mgに軍配が上がります。
定常状態になったら正直気にしなくて良いポイントだと思うので投与初期はしっかり空腹時に飲んでいただくのがベストですね。
ただ、寝る前に飲むので寝ちゃったら効果の発現時間が多少遅くても問題になる事は殆ど無いと思います。
勿論「痒くて眠れない」とか「鼻が詰まって眠れない」なんてこともあるかもしれないので、その辺りは患者さんからしっかり聞き取って「食後だと効果が出るまで時間かかっちゃうから注意してね」という旨の説明は必須です。
結論
~ビラノア錠まとめ~ ・1日1回20mgを空腹時に投与 ・食後投与でAUCは60%、Cmaxは40%になる ・10mg投与でも20mg投与と同等のスコア改善が見込める ・上記の事からビラノアは食後でも効果は期待できるが、やむを得ない理由がある場合のみ。 ・患者さんにむやみに「食後でも良い」とは伝えずに、「どうしてもの場合は飲まないよりは、食後に飲む方が良いです」位に伝えるのが無難 ・定常状態になっていれば、食事をシビアに気にしなくても大丈夫そう
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