どうも、シンパパ薬剤師Kです。
こないだ抗血小板薬についてまとめたので今回は抗凝固薬についてお話ししようと思います。
以前の記事で、
抗凝固薬はフィブリンなどの凝固因子に対して働きかけます。
不整脈や心不全などで遅くなった血流内で発生する血栓を防ぎます。
この場合の血流は遅くなっているので、先ほどの白色血栓とは異なり赤血球も含まれ赤い血栓が出来ます。
この赤色血栓は、赤血球を含むため血液内で大きくなります。
この血栓によって血管が詰まると脳塞栓症などが発生し、最悪の場合死に至ります。
それを防ぐために抗凝固薬を使って血液をさらさらにする必要があるってことですね。
という話をしました。
今回は、この知識をもとに抗凝固薬について少し掘り下げてみます。
フィブリンの産生を抑制する機序
そもそもフィブリン血栓を防ぐための機序を理解していないと、薬を掘り下げても理解しにくいと思うのでおさらいしましょう。
フィブリンの産生には様々な血液凝固因子が関与しますが、大事な部分は最後の2ステップです。
Xa因子がプロトロンビン(Ⅱ因子)をトロンビンにする
↓
トロンビンがフィブリノーゲン(Ⅰ因子)をフィブリンにする
抗凝固薬はこれらの凝固因子を阻害することでフィブリン血栓が出来ないようにします。
ワーファリン
言わずと知れた「血液をサラサラさせる薬」の代表格ですね。
専門知識が無い方でも聞いたことのある、ワーファリンです。
ワーファリンは凝固因子のⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹを阻害して作用を示します。
このⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子が産生されるためにはビタミンKが必要です。
ワーファリンはビタミンKと競合する形で凝固因子の産生を阻害します。
ワーファリンの強みは、半減期が長いこと(55~133hr)とPT-INRで客観的に効き目を評価しやすいことです。一般的にPT-INRは2~3位がひとつの目安となります。
また適応外適応ですが、後述するNOACは透析患者に使えないため透析患者の人工弁患者にワーファリンを使用します。
ちなみに、ワーファリンは他の抗凝固薬に比べて1/10位安いです。
新規経口凝固薬(DOAC)
DOACはワーファリンの欠点を改善したお薬です。
プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナの4種類があります。
作用機序
DOACの作用機序は以下の2パターンです。
A.トロンビンを阻害することでフィブリンの産生を阻害する。 B.Xa因子を阻害することでトロンビンの産生を阻害する。
Aに該当するのはダビガトラン、Bに該当するのはイグザレルト、エリキュース、リクシアナです。
トロンビンは血小板を活性化させる作用があるので、トロンビンを阻害するプラザキサは血小板抑制作用も示します。
適応
DOACの適応は3種類あります。
①非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中 及び 全身性塞栓症の発症抑制 ②深部静脈血栓症 及び 肺血栓塞栓症の治療・再発抑制 ③下肢整形外科手術施工患者における静脈血栓塞栓症の発生抑制
①はDOAC共通の適応です。
②はイグザレルト、エリキュース、リクシアナに適応があります。
③はリクシアナのみ適応があります。
用法用量
①非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中 及び 全身性塞栓症の発症抑制
・ダビガトラン→1回150㎎を1日2回経口投与
・イグザレルト→1回15㎎を1日1回食後に経口投与
・エリキュース→1回5㎎を1日2回経口投与
・リクシアナ→体重60kg以上:60mg・体重60kg未満:30mgを1日1回経口投与
②深部静脈血栓症 及び 肺血栓塞栓症の治療・再発抑制
・イグザレルト→初めの3週間は15㎎を1日2回食後投与、その後は15㎎を1日1回食後投与
・エリキュース→初めの7日間は10mgを1日2回経口投与、その後は5㎎を1日2回経口投与
・リクシアナ→体重60kg以上:60mg・体重60kg未満:30mgを1日1回経口投与
イグザレルトとエリキュースは導入時の投与量が多く設定されています。
更にイグザレルトのみ導入時のリスクに関して警告が出ています。
③下肢整形外科手術施工患者における静脈血栓塞栓症の発生抑制
・リクシアナ→体重に関わらず30mgを1日1回経口投与
腎障害時の減量
①非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中 及び 全身性塞栓症の発症抑制
・ダビガトラン→1回115㎎を1日2回経口投与
・イグザレルト→Ccr=30~49mL/min:10㎎を1日1回食後に投与
Ccr=15~29mL/min:投与の可否を検討したうえで、10mgを1日1回食後投与
Ccr=15mL/min以下:禁忌
・エリキュース→次の基準に2つ以上当てはまる場合、1回2.5㎎を1日2回経口投与
・80歳以上
・体重60kg以下
・血清クレアチニン1.5㎎/dL
・リクシアナ→Ccr=30~50mL/min:30㎎を1日1回投与
Ccr=15~30mL/min:投与の可否を検討したうえで、30mgを1日1回投与
Ccr=15mL/min以下:禁忌
②深部静脈血栓症 及び 肺血栓塞栓症の治療・再発抑制
・イグザレルト→添付文書上、減量について記載なし
・エリキュース→Ccr=30~50mL/min:出血のリスクupだが減量について記載なし
Ccr=30mL/min以下:投与しない
・リクシアナ→Ccr=30~50mL/min:30㎎を1日1回投与
Ccr=15~30mL/min:投与の可否を検討したうえで、30mgを1日1回投与
Ccr=15mL/min以下:禁忌
③下肢整形外科手術施工患者における静脈血栓塞栓症の発生抑制
・リクシアナ→Ccr=30~50mL/min:個々の塞栓症リスクを考慮したうえで、15㎎を1日1回投与
おまけ
DOACの中でイグザレルトだけ併用禁忌の薬があり、この中では一番相互作用を気にする必要があります。
またイグザレルトは半減期が短いため、次回服用時における血中濃度の低下を示唆する文献もあります。
とはいえ、1日2回のエリキュースより1日1回という点では優れているので、患者の背景を十分に考慮して薬剤が適正か判断する必要があります。
有名な話ですが、プラザキサはカプセルが特殊で一包化できません。
また、カプセル内に酒石酸が入っている為、消化器系の副作用が出やすいです。
多めのお水か食事中に飲むように指導しましょう。
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