どうもシンパパ薬剤師Kです。
今回は利尿薬についての違いを僕なりに比較して考えてみようと思います。
以前ループ利尿薬の比較をまとめましたが、今回は利尿薬全体の比較をしてみようと思います。
尿の排泄に関わるホルモン
まずは尿の排泄に関する基本知識をおさらいしましょう。
尿の排泄に関与する主なホルモンは次の3つです。
尿の排泄に関与する主なホルモン ・アルドステロン ・バソプレシン ・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
アルドステロン
主にアンジオテンシンⅡによって副腎皮質からの分泌が促進されるステロイドホルモンです。
遠位尿細管と集合管においてNaイオンの再吸収を促進して尿量を減少させます。
つまりアルドステロンの働きを阻害すると尿量が増加します。
バソプレシン
脳下垂体後葉から分泌されるペプチドホルモンで、集合管上皮細胞にあるバソプレシンV2受容体を刺激することで水チャネルを尿細管腔側に移動させ、水の再吸収を促進するので抗利尿ホルモンとも呼ばれます。
つまりバソプレシンV2受容体を阻害すると尿量が増加します。
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
心房から分泌されるペプチドホルモンで細胞膜に存在するグアニル酸シクラーゼに作用し細胞内のcGMPを上昇させる作用が主な作用です。Naイオン排泄を促進し利尿作用を示します。
利尿薬の種類
さあ、ここからは利尿薬の比較をしていきましょう。
まず利尿薬を分類すると以下のようになります。
~利尿薬の分類~ ・ループ利尿薬 ・チアジド系利尿薬 ・カリウム保持性利尿薬 ・炭酸脱水酵素阻害薬 ・バソプレシンV2受容体拮抗薬
では各分類ごとの特徴はどういったものか解説していきます。
ループ利尿薬
・フロセミド(ラシックス) ・アゾセミド(ダイアート) ・トラセミド(ルプラック)
強い利尿作用を示しよく使われているループ利尿薬。
ヘンレループ上行脚のNa-K-2Cl共輸送系尿細管側から阻害しNaの再吸収を抑制します。
その強い利尿作用を活かして浮腫みを取る場合によく用いられます。
ただしカリウムの排泄も促進される為、低カリウム血症の副作用に注意が必要です。
細かな比較は以前の記事でしていますが、フロセミド(ラシックス)は腎排泄型で、アゾセミド(ダイアート)とトラセミド(ルプラック)は肝代謝型という点は覚えておきたいポイントです。
高齢者ですと腎機能や肝機能が低下していることが多く、思いのほか強く効果を発揮してしまうこともありますからね。
トラセミドが他のループ利尿薬より低カリウム血症になりにくいのは抗アルドステロン作用を持つことに由来しています。
後述する抗アルドステロン作用を持つスピロノラクトンは心不全の死亡率を減少させるのでトラセミドも期待できるのか気になるところです。
チアジド系利尿薬
・トリクロルメチアジド(フルイトラン) ・ヒドロクロロチアジド(発売中止に伴い先発なし)
チアジド系利尿薬は遠位尿細管の尿際管腔側にあるNa-Cl共輸送体に作用してNaの再吸収を抑制します。血管平滑筋を弛緩する作用も持っており、高血圧の第一選択薬でもあります。
強力なNa排泄とともにKも排泄するのでループ利尿薬同様、低カリウム血症への注意が必要です。
チアジド系利尿薬で気になるポイントは、副作用として肺水腫や間質性肺炎が報告されている点です。
浮腫みを取る薬で肺に水が溜まるなんてあまりイメージが湧かないかもしれませんが、肺に水が溜まったことある患者さんには向いていないかもしれません。
カリウム保持性利尿薬
・スピロノラクトン(アルダクトン)
カリウム保持性利尿薬は細胞質にあるアルドステロン受容体を遮断して利尿作用を示します。
利尿作用は弱いですが、心不全における死亡率を減少させるという報告もあり、心不全には優先して使いたい利尿薬の一つです。抗アルドステロン作用が心不全の死亡率を減少させるのであればループ利尿薬のトラセミドも同じように心不全の死亡率の低下を期待できるのかもしれないですね。
相互作用で気を付けたいのが、ARBもしくはACE阻害薬との併用時の高カリウム血症です。
単剤より高カリウム血症のリスクが上がるので覚えておきましょう。
炭酸脱水酵素阻害薬
・アセタゾラミド(ダイアモックス)
アセタゾラミドは高血圧には使われず主に緑内障や癲癇等に用いられます。
作用機序は炭酸脱水酵素を阻害することで水と二酸化炭素から炭酸の生成を阻害して、Hイオン濃度を低下させてHイオンが分泌されNaイオン再吸収を阻害するといった機序です。
利尿作用は弱いのですが、心性浮腫や肝性浮腫に用いられることもあります。
バソプレシンV2受容体拮抗薬
・トルバプタン(サムスカ)
トルバプタン(サムスカ)は、バソプレシンV2受容体と拮抗する形で集合管での水の再吸収を抑制します。
Naイオンに関与せずに利尿作用を示すので高Na血症に注意が必要です。その為、心不全や肝硬変における体液貯留に用いる場合は他の利尿薬を併用します。
利尿作用はかなり強力で、ループ利尿薬とスピロノラクトンを併用しても体液貯留がある肝性浮腫患者にトルバプタンを追加することで効果があることが認められています。
「基本的に単独投与する薬ではない」というのも押さえておきたいポイントですね。
基本的になので肝性浮腫などで単剤投与も可能なのですが、「サムスカは他の利尿薬と併用する薬」という認識でいいと思います。
トルバプタンの導入は入院して行うものというのも薬剤師は絶対知っておきたい注意事項ですので覚えておきましょう!
サムスカは注意事項の多い薬なので後日別途まとめたいと思います。
まとめ
・ループ利尿薬、チアジド系利尿薬は低カリウム血症に注意 ・カリウム保持性利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬は高カリウム血症に注意 ・浮腫みにはループ利尿薬が使われることが多い ・チアジド系利尿薬は高血圧の第一選択薬 ・カリウム保持性利尿薬は心不全の死亡率を減少させる ・脱水酵素阻害薬は高血圧に使われない ・バソプレシンV2受容体拮抗薬は最終手段くらいの立ち位置
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