HIF-PH阻害薬は同時期に複数発売され、何が違うのか戸惑う方も多いと思いますので簡単にまとめておこうと思います。今回比較するのはエナロイ・ダーブロック・バフセオの3剤です。
HIF-PH阻害薬の作用機序
エリスロポエチンの産生に関与するHIF-αを分解するHIF-PHを阻害することで、HIF-αによるエリスロポエチン産生を促し赤血球の産生を亢進させます。
用法の違い
・エナロイ:1回2mg(血液透析の場合4㎎)を開始用量とし,1日1回食前又は就寝前に経口投与する。患者の状態に応じて投与量を適宜増減。最高用量は1回8mg ・ダーブロック:1回2mg又は4mg(血液透析の場合4㎎のみ)を開始用量とし、1日1回経口投与する。患者の状態に応じて投与量を適宜増減。最高用量は1日1回24mg ・バフセオ:1回300mgを 開始用量とし、1日1回経口投与する。患者の状態に応じて投与量を適宜増減。最高用量は1日1回 600mg
この3種の中でエナロイが唯一「食前又は就寝前」という縛りがあります。
エナロイは食事の影響でAUCが約26%低下しますが、ダーブロックとバフセオはAUCが約10%程度の低下なので食前じゃなくてもOKです。
投与開始の基準は3剤同様
赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合の本剤投与開始の目安は、保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で 11g/dL 未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で 10g/dL 未満とする。
投与量調節の違い
・エナロイ:1~8㎎の5段階 ・ダーブロック:1~24㎎の8段階 ・バフセオ:150~600㎎の4段階
一番細かく調整できるのはダーブロックですが、段階が多ければ多いほど最大用量まで増量するのに必要な時間が長くなってしまいます。ここは一長一短ってところでしょうか。
併用薬(相互作用)
・エナロイ:Ca、Mgや鉄剤とイオン結合し吸収低下。CYP基質の薬剤の動態に影響。 ・ダーブロック:クロピドグレルと併用でAUC上昇。 ・バフセオ:Ca、Mgや鉄剤とキレート生成。スタチン、フロセミドのAUC上昇。
ダーブロックはクロピドグレルと併用することでダーブロックのAUCが2倍近く上昇しますが、治療においては併用していても投与初期におけるヘモグロビン濃度に影響はないようです。
一方、エナロイとバフセオは鉄剤との併用で吸収が下がってしまうので服用タイミングを考えなくてはいけません。エナロイは元々食前か就寝前なので就寝前にしておくのが無難ですね。バフセオも同様に就寝前にしておけば問題ないかと思われます。
カルシウムでも吸収に影響が出るので、食事で摂る牛乳やチーズなどの乳製品の影響を考慮して就寝前が無難ですかね?
COMPに不安がある患者さんに対しては食後の薬と一緒でも問題ないダーブロックがよさそうですね。
錠剤の大きさ
エナロイとダーブロックは殆ど同じくらいの大きさで、バフセオがちょっと大きいですね。
エナロイは1㎎から投与可能ですが2㎎錠と4㎎錠しかないので割線が付いています。
一包化可能か
・エナロイ:一包化可能 ・ダーブロック:一包化可能 ・バフセオ:一包化可能
3剤とも一包化OKです。
まとめ
使い勝手がいいのは、鉄剤との飲み合わせも問題なく一番細かく調節できるダーブロックかなという印象です。腎性貧血の治療薬なので鉄剤の併用は多いでしょうし。
とはいえ、バフセオとエナロイも就寝前にすれば特に問題なく服用できるので、ダーブロックに比べて迅速に用量を増減出来る強みもあるので、違いはあれど「どれが良い」という感じではなく「一長一短」ですね。これから臨床成績が増えてきてどういう差が出てくるのか楽しみです。
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