どうも、シンパパ薬剤師Kです。
アドレナリンβ受容体遮を遮断作用をもつ薬の中で心不全に用いられるこの2剤。
似ている作用点や適応からよく纏めて考えられるこの2剤ですが、どういう使い分けがされているのか違いを見ていきましょう。
作用点の違い
カルベジロール(商品名:アーチスト)はα1β遮断薬で、ビソプロロール(商品名:メインテート)は選択的β1遮断薬です。
心臓に作用する上で重要なのがβ1受容体です。β1受容体遮断により心筋への刺激を抑制し、心臓の働きを落ち着かせて心拍出量を減らすことで降圧作用を示します。
α受容体は血管や前立腺、β2受容体は気管支や糖代謝などに関与しています。
カルベジロールはα受容体にもβ2受容体へも作用するので心臓だけでなく全身性の作用があり、ビソプロロールは心臓に選択的な作用を示します。
また、ISAが「+」なのか「-」なのかも重要です。
ISAが+の場合、β受容体遮断薬にも関わらず交感神経非興奮時にはβ受容体刺激作用を示します。
心不全や虚血性心疾患にはISA(-)の薬剤が効果的です。
ちなみにカルベジロールとビソプロロールはどちらもISA(-)です。
カルベジロールとビソプロロールの受容体選択性
各薬剤の受容体への選択性は下記の通りです。
カルベジロールの受容体選択性
α:β=1:8
β1:β2=7:1
α: β1:β2 =1:7:1
ビソプロロールの受容体選択性
β1:β2 =23:1 (MAX 75:1)
メインテートのインタビューフォームに「β1受容体(イヌ心室筋)に対する親和性はβ2受容体(イヌ肺)に比べて23倍高く、β遮断薬で一番高い選択性を持つ。」と記載があります。
適応の違い
適応はほとんど同じですが若干異なります。
カルベジロール
・本態性高血圧症
・腎実質性高血圧症
・狭心症
・次の状態でACE阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤などの基礎治療を受けている患者
→虚血性心疾患 又は 拡張型心筋症に基づく慢性心不全
・頻脈性心房細動
ビソプロロール
・本態性高血圧症
・狭心症
・心室性期外収縮
・次の状態でACE阻害薬、ARB、利尿薬、ジギタリス製剤などの基礎治療を受けている患者
→虚血性心疾患 又は 拡張型心筋症に基づく慢性心不全
・頻脈性心房細動
カルベジロールは腎実質性高血圧症、ビソプロロールは心室性期外収縮にそれぞれ適応があります。
治療効果
カルベジロール
高血圧の改善率:70.9%
狭心症の改善率:71.1%
慢性心不全の死亡率:11.2%(プラセボ群:16.8%)
(アーチストのインタビューフォームから)
ビソプロロール
高血圧の改善率:78.8%
狭心症の改善率:71.4%
慢性心不全の死亡率: 11.8%(プラセボ群:17.3%)
(メインテートのインタビューフォームから)
これだけを見ると治療効果は同等ですかね?
α受容体遮断作用も併せ持つカルベジロールの降圧作用が若干弱いのは何故でしょうか、、?
個人的には、陰性変時作用と陰性変力作用がビソプロロールの方が高い事に由来してるのかな?と考えています。
高齢者の高血圧にたいして有用
高齢者の場合、血管の伸展性が低下しているので末梢性の血管拡張剤による降圧は若年層に比べて期待できないようです。
なので、高齢者に対して中枢性の降圧作用をもつβ遮断薬が有用と言われています。
使い分け
心不全の適応を取得したのはアーチストが先なので、アーチストの方がエビデンスが豊富です。
ですが、アーチストのβ2遮断作用は気管支や糖・脂質代謝に影響が出てしまうのでメインテートをチョイスする。という意見もあるみたいです。
この糖脂質代謝に関しては様々な意見があるようで、カルベジロールの糖脂質代謝に関して少し調べて見たところ、「α受容体遮断で糖脂質代謝を亢進するのでβ受容体遮断による糖脂質代謝抑制を帳消しにする」というデータがあり、最近では「カルベジロールは糖脂質代謝を悪くするどころか改善する」と考えられています。
気管支への作用に関して2剤の添付文書を見ると、アーチストは気管支喘息に禁忌で、メインテートは慎重投与ですが禁忌ではありません。
適応による使い分け以外は、「β1遮断作用以外の作用が邪魔になるかどうか」がカギになってきそうですね。
気管支喘息を併発している場合はメインテートの方が適しているので「どっちか選ぶならメインテートを選んでおく」って考えもあるみたいですが、売り上げはどっちも同じくらいなので、併発してない場合はエビデンスのあるアーチストの方が使われているようです。
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