どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今回はPPIの出荷調整を受けてH2ブロッカーとの違いについて改めて確認していこうと思います。
胃酸分泌のメカニズム
まずは胃酸分泌のメカニズムを確認していこうと思うので図を作ってみました。
ムスカリン受容体(主にM3受容体)とヒスタミン受容体(主にH2受容体)とガストリン受容体を介して、プロトンポンプ(H+,K+ ーATPase)を活性化する事でプロトンポンプが壁細胞内の分泌細管膜へ移動し、KCl輸送系を活性化する事で胃酸分泌が促進されます。
H2ブロッカーの特徴
H2ブロッカーは可逆的にH2受容体を阻害する事で胃酸分泌抑制作用が速やかに発揮され、特に夜間に強い胃酸分泌抑制作用を示します。
食事の影響や代謝酵素の影響が少ないため様々な場面で使いやすい薬剤です。
ただし、腎代謝の薬物が多いので腎障害患者には注意が必要です。
また、長期に服用することで耐性が生じる。
PPIの特徴
PPIはプロトンポンプを非可逆的に阻害することでH2ブロッカーより強い胃酸分泌抑制作用を示します。
プロトンポンプは24時間で約25%が新しいものに置き換わるので、半減期が短いPPIでは定常状態になるまで24時間を通じた胃酸分泌作用は困難だそうです。
PPIは酸によって活性化されCYP2C19によって代謝されます。
この性質はしばしば問題になる事があります。
酸によって活性化が必要なので胃酸分泌作用が最大になるまで3~5日ほどかかり、CYP2C19の遺伝子多型により胃酸分泌効果に差が出てしまいます。
代謝活性が高いと胃酸分泌作用が低くなってしまうので個人差に注意が必要です。
このCYP2C19による個人差を抑えた薬剤がエソメプラゾール(ネキシウム)です。
H2ブロッカーとPPIはここが違うポイント
胃酸分泌抑制作用
胃酸分泌抑制作用がPPI>H2ブロッカーというのは上記の図で分かる通り、PPIはH2受容体だけでなく他の受容体からの作用も抑えられるからです。
作用発現時間
PPIは酸によって活性化される為の時間が必要なのでH2ブロッカーより時間がかかるとされています。
前述した通りPPIは作用が最大になるまで3〜5日かかります。
代謝酵素によって個人差が出る
PPIはCyp2c19に代謝される特徴があり、遺伝多型により個人差が出やすいです。
エソメプラゾール(ネキシウム)はこの欠点を解消した薬剤です。
薬剤耐性
H2ブロッカーは長期服用で耐性を生じて薬効が弱くなってしまいますが、PPIは耐性を生じません。
ただPPIは基本的に投与上限が設定されているので、耐性が無いからと言ってダラダラと長期に渡って使って良いという訳ではありません。
夜間はH2ブロッカーが優れる
PPIは半減期が短い上にプロトンポンプが新しいものに変わっていくので夜間に作用が弱くなってしまう欠点があります。
逆にH2ブロッカーは夜間の作用が強く出る特徴があるので、夜間はPPIよりH2ブロッカーの方が強い胃酸分泌抑制作用を期待出来ます。
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