ループ利尿薬の抵抗性について薬剤師が考えてみた!

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医薬品

心不全などによる浮腫みでよくみるループ利尿薬。特にフロセミドをお目にかかる頻度は利尿薬の中で一番多いといっても過言じゃないと思います。

フロセミドを初めとするループ利尿薬の抵抗性について考えたことはあるでしょうか?

「心不全の状態は悪くなっていないのに浮腫みが悪化しちゃう」「時間が経つに連れて利尿効果が弱くなる」、臨床において結構困りますよね。
今回はループ利尿薬による抵抗性について原因と対策を僕なりにまとめていこうと思います。一薬剤師の意見、考えなのでこれが絶対正しい!という訳じゃないことをご理解頂いたうえで読んでください。

ループ利尿薬の抵抗性の原因は?

ループ利尿薬の抵抗性を「代償機構」「腎臓の状態」の2点に分けて考えて解説していこうと思います。

代償機構

遠位尿細管と集合管の代償機構

まずループ利尿薬を使う上で知っておきたいのが「ループ利尿薬の長期投与によって遠位尿細管と集合管における水分再吸収は促進される」という事です。

ヘンレループでNa+の吸収が阻害された分、それより先の遠位尿細管と集合管で吸収しなくちゃと体が反応してしまうんですね。これは動物実験でフロセミドを継続的に投与した場合、遠位尿細管細胞の肥大や集合管のNa+-K+-ATPaseが活性化することが報告されています。

RAA系の代償機構

ループ利尿薬を継続することでRAA系(レニンアンジオテンシンアルドステロン系)を亢進してしまう代償機構があることも考慮しておきましょう。
RAA系が亢進するとNa+の再吸収と血管収縮が起こるので利尿効果も下がり血圧も下がりにくくなってしまいます。

腎臓、心臓の状態

利尿作用には当然腎臓の状態が大きく作用します。これはループ利尿薬だけではなく他の利尿薬も同じですね。
利尿薬の作用は「尿の再吸収抑制」であって尿を作り出すことではないので、そもそも再吸収される原尿がないと利尿薬は効果を発揮できないですよね。
利尿剤を使っていけば体内の水分量が減るので循環血液量は減りますし、それによって腎血流量も減るので原尿が減るのは仕方ないです。
循環血液量には心臓の拍出量も影響しますので、利尿剤の効果には腎臓の状態に加えて心臓の状態も反映されます。

対策はどうする?

代償機構への対策

遠位尿細管と集合管による水分再吸収促進に対しての対策はチアジド系の利尿薬が有効です。
ガイドラインでも推奨されているのですが、チアジド系も低K+血症のリスクがあるので併用することでそのリスクが増大することに注意しましょう。

RAA系の代償機構はループ利尿薬の切れ目に反射的に起こりやすいようなので長時間型のループ利尿薬に変えると、この反射的な代償機構が起きにくいとされています。
またRAA系におけるアルドステロンの作用を抑える目的でセララやスピロノラクトンなどのK+保持性利尿薬(MRA)を使う事も有効だと考えられています。

腎臓、心臓の状態への対策

腎臓と心臓の状態を改善できればそりゃいいんですが、そんな簡単に改善できるなら世話が無いですし浮腫みを取る為に頑張ってループ利尿薬を飲んでもらう必要はないわけで。。なんていったら元も子もないですね。

どっちにしても結局は「循環が悪い→腎血液量の低下」が問題です。
簡易的な改善方法は強心薬などによって心拍出量の増加を促す方法だと思います。ジゴキシンは心不全に対して生命予後を改善しないというデータもあるみたいですが、目的がはっきりしているのであれば有効な薬剤なんでしょうね。

あと、心不全の場合と腎不全の場合では抵抗性の性質は異なるようで「心不全は効果の最大値が下がる」のに対して「腎不全は効果を出すために必要な量が増える」といった違いがあります。
つまり腎不全の場合は用量を増やせばOKなので、用量に余裕があればループ利尿薬を増量することで対応できると思います。

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