どうも、シンパパ薬剤師Kです。
フォシーガに続きジャディアンスも慢性心不全の適応が追加されました。
血糖を低下させる薬を糖尿病ではない患者に投与することで注意するポイントも異なってくるのではないかと思い添付文書とベーリンガーインゲルハイムのHPで公開されている国際共同第Ⅲ相試験の結果を読んでまとめていきたいと思います。
◎フォシーガの糖尿病と慢性心不全の違いについてはこちら◎
以前にSGLT2阻害薬について比較した記事も宜しければ読んでください。
適応する上での大前提は
慢性心不全に用いる上での大前提は①慢性心不全の標準的な治療を受けている。②臨床成績の患者背景を十分に理解して適応患者を選択する。という点です。
ここでのポイントは「既に心不全の治療を受けている事」と「左室駆出率が低下した患者が対象」というところです。
慢性心不全の標準的な治療とは、βブロッカーやARB、ACE、ARNI、強心薬などによる治療の事です。
左室駆出率が保たれた患者に対しては有効性も安全性も確立していません。
臨床成績における患者背景
臨床成績は下記の左心機能が低下した患者が対象となっています。
・LVEF40%以下 ・NYHA分類Ⅱ~Ⅳ度 ・eGFRが20mL/min/1.73m2以上
用法用量
用法用量は10mgを1日1回朝食前、または朝食後に経口投与します。
糖尿病に用いる場合は25mgへの増量も可能ですが、慢性心不全に用いる場合は25mgへの増量はNGです。
ただし、糖尿病と慢性心不全を併発している場合に血糖コントロールを目的に25mgへ増量することはOKです。
慢性心不全に対して25mgへ増量出来ないのは10mgを超える用量での有効性が確立していない為です。
食事の影響
ジャディアンスは食事の影響で吸収が低下します。
ですが用法はどちらでも大丈夫です。Cmaxは60%位になりますがAUCは85%位なので問題ないという事だと思います。
重要な基本的注意
ジャディアンスを慢性心不全に用いる際の重要な基本的注意は糖尿病に用いる時と大きな変わりはありません。
低血糖や脱水、尿路感染症への注意は慢性心不全に用いる際も当然必要です。
肝機能障害への注意事項は糖尿病に使う時と変わりないのですが、腎機能障害への注意事項は若干異なります。
糖尿病に使う場合は中等度腎機能障害患者への投与は効果が十分に発揮されない可能性がある為、投与の必要性を慎重に検討する必要がありましたが、慢性心不全に使う場合は中等度腎機能障害患者への注意事項はありません。
後述しますが、慢性心不全に使う場合は糖の再吸収抑制が目的ではないので中等度程度の腎機能障害であれば問題ないようです。
糖尿病じゃない人に使ったら低血糖になってしまわないか?
ジャディアンスを慢性心不全に使うにあたって多くの人が「糖尿病じゃない人が使ったら低血糖になりやすそうじゃない?」と疑問に思いますよね。
臨床成績を見ると主な副作用は低血圧で「他者による介助を必要とする重度の低血糖は2型糖尿病を併発する患者おいてのみ認められた」という記載があります。
つまり「血糖値が普通だから低血糖になりやすい」という事は無さそうです。
慢性心不全に対しての作用機序
SGLT2を阻害することでなぜ慢性心不全に効果があるのでしょうか。
添付文書にこのような記載があります。
・エンパグリフロジンは腎層の近位尿細管におけるSGLT2を介してグルコースだけではなくナトリウム再吸収も抑制するため遠位尿細管へのナトリウム送達が増加する。 その結果として尿細管糸球体フィードバックの増加、心臓の前負荷及び後負荷の減少、並びに交感神経活性の低下など生理的機能に変化を及ばす可能性がある。 ・また、エンパグリフロジンの内皮機能に対する直接的作用、心臓の代替エネルギー源としてのケトン体供給による代謝への作用及び酸化ストレス、炎症の抑制も慢性心不全に対する作用に寄与している可能性がある。
尿量増加による心負担軽減と糸球体フィードバック、交感神経活性の低下だけでなくその他の作用も慢性心不全に期待できるようです。
糖尿病に使う場合との違い、注意事項まとめ
大まかに糖尿病に使う場合との違いと注意事項をまとめると
・左心機能が低下した患者、心不全の治療を行っている患者が対象 ・通常10mg1日1回朝食前 or 朝食後投与 ・糖尿病と合併している場合、血糖コントロール目的であれば25mgに増量可能 (25mgにしたからと言って心不全への効果が上がる訳ではない) ・食事によってCmax低下、AUC低下、Tmax遅延があるがはAUC低下が15%なので食後でもOK ・重度の腎障害にも使う事が可能(慎重に投与を考慮&eGFR 20未満は臨床試験していない) ・糖尿病ではない患者に対して使っても低血糖のリスクが高くなるわけではなさそう
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