どうも、シンパパ薬剤師Kです。
高リン血症治療薬のリオナに鉄欠乏性貧血の適応が追加されたので、リオナの用法や注意事項と一緒にクエン酸第一鉄との比較をしていきたいと思います。
用法用量
鉄欠乏性貧血に用いる場合は食直後に1日1回500mgで、患者の状態を考慮して適宜増減。1回500mgを1日2回が最大量です。
高リン血症と用法用量が異なるので注意です。
鉄欠乏性貧血:通常、成人にはクエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回食直後に経口投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1回500mgを1日2回までとする。 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善:通常、成人にはクエン酸第二鉄として1回500mgを開始用量とし、1日3回食直後に経口投与する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日6,000mgとする。
食事の影響
リオナは食後の方が空腹時より吸収が良いです。
AUC,Cmaxともに3~4割程度食後の方が高いのですが、治療に影響するほどの事ではありません。
お茶(タンニン)は?
リオナの添付文書とインタビューフォームでは特に記載が無く、併用注意の欄にタンニン酸アルブミンなどもありませんでした。
ただ、鉄が吸収される際に2価イオンであることが重要なのでタンニンと結合したら吸収が減るのではないかと予想できます。
ですが昔の考えとは異なり、鉄欠乏性貧血では鉄の吸収が亢進しているのでリオナに関わらず鉄剤による貧血の治療においてお茶を厳密に制限する必要は無いと考えられています。
妊婦・授乳婦
鉄欠乏性貧血は男性に比べて女性の方がなりやすい疾患です。
婦人科で処方されているのをよく見かけますので妊婦さんや授乳婦さんが使えるのかどうかは抑えておきましょう。
添付文書の記載は下記の通りです。
9.5 妊婦 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 9.6 授乳婦 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し,授乳の継続又は中止を検討すること。
結論有益性を考慮して投与可能です。
婦人科の先生から処方されているケースは良くあるようですし、他の鉄剤同様に過剰投与でなければ概ね問題なしと考えて良さそうです。
因みにフェルムやフェロミアの添付文書にはリオナとは異なり、妊婦・授乳婦について特に記載がありません。
副作用
副作用について添付文書やインタビューフォームを見ると、他の鉄剤より消化器系の症状が多いです。
一般的に消化器系の副作用が多いと言われている鉄剤ですが、フェロミア(クエン酸第一鉄)は吐き気・悪心が3%程で下痢が1%程とインタビューフォームに記載されています。(使用成績調査)
それに対してリオナは高リン血症患者対象の試験で下痢が12%と非常に高く報告されています。
悪心や便秘も2%以上なので副作用はそれなりに高い印象を受けます。
リオナと他の鉄剤(第一鉄)って何が違うの?
そもそもリオナと他の鉄剤は何が違うのかという点ですが、従来の貧血治療に用いる鉄剤は吸収が速やかな第一鉄(2価の鉄イオン)です。
しかしリオナはリンの排泄を目的とした第二鉄(3価の鉄イオン)であり、消化管からの吸収が低い特徴を持っています。その為リオナは体内で第二鉄から第一鉄へ変換される必要があるのです。
これらのことから、変換される必要のない第一鉄(従来の鉄剤)の方が効率よく速やかに吸収されるのは当然ですよね。
ちなみに第一鉄もリンと吸着はするのですが消化管から吸収されてしまうのでリンの排泄には向いていません。
治療効果が高いのはどっち?
治療効果について添付文書とインタビューフォームにクエン酸第一鉄100mgと比較しているデータが載っています。
そのデータによると「リオナ500mg<クエン酸第一鉄100mg≦リオナ1000mg」という事が分かります。
1日1回ならクエン酸第一鉄の方が高い効果を期待できます。
リオナを1日2回飲むのであればクエン酸第一鉄と同等の治療効果を得られますが、GEがあるし1日1回で良いクエン酸第一鉄で良くない?と僕は思ってしまいます。
吸収されなかった鉄は悪影響ではないのか?
クエン酸第一鉄の方が吸収効率が良いので、リオナに比べて第一鉄は投与量がかなり少ないですよね。
両者の投与量が100mgと1000mgと開きが大きいのに治療効果が同等という事は、リオナは吸収されずに腸管を通る量が多いのではないかと思うんですが、もしかしたらそれが副作用の多さと関係あるのかもしれないですね。
まとめ
・1日1回500mg or 1日2回1000mg(500mg×2回) ・空腹時で吸収下がるが治療に大きな影響なし ・お茶との相互作用の記載はないが貧血治療に大きな影響なし ・妊婦・授乳婦には有益性投与だが、産婦人科医からの処方があるので問題ないと考えられる ・副作用の頻度は高めで下痢が12%報告されている ・リオナ(クエン酸第二鉄)はフェロミア(クエン酸第一鉄)より吸収効率が悪い ・治療効果は リオナ500mg < クエン酸第一鉄100mg ≦ リオナ1000mg
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