今回は心臓に異常があるかどうか確認するのによく用いられるBNPとNT-ProBNPについてまとめていこうと思います。
BNPってなに?
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)とは、主に心臓の心室で産生される利尿作用を持つホルモンで基準値は18.4pg/mLです。心室に7~9割くらい発現されるので心不全の診断に重要な検査項目です。
基準値を超えていても軽度の上昇であればそこまで気にする必要はありませんが、100pg/mLを超えてくると、心不全などの心疾患の疑いがありますので循環器への受診を推奨します。
NT-ProBNPってなに?
NT-ProBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)とは、BNPの前駆体です。
BNPとの違い
BNPより簡易に測定でき安定性も高いことからNT-ProBNPを測定している医療機関もあります。
心不全診断の基準となるBNP100pg/mLに対して、NT-ProBNPにおける心不全診断の基準は400pg/mLとNT-ProBNPの方が高い数値になりますが、BNPに対した明確な換算値はないようです。
ただ、BNPと比べて腎機能の影響を受けやすいので高齢者や腎機能障害患者に対しては注意が必要です。
BNP、NT-ProBNPが高い理由は?
これらの数値が高くなる理由は、心臓(特に左室)への負荷です。
左心室がうっ血したり拡大することで分泌されるのでBNPが高いということは心臓が(主に心室が)何かしらのダメージを負っているサインです。
BNPが18.4~40pg/mLの場合は緊急を有する心不全である可能性は非常に低く、40pg/mLを超えた辺りから心電図や心エコーなどの実施を検討するとよいとされています。
100pg/mLを超えてくると治療対象となる心不全である可能性がありますので早期に専門医の診察を受けた方が良いでしょう。
BNPが高い=心不全ではない
ここで勘違いしてほしくないのが「BNPが100pg/mLを超えているから心不全という訳ではない」ということです。
心不全と聞くとかなり怖いのでBNPが高値だと不安になるのは当然ですが、年齢や腎障害、肺疾患などの影響を受けるのでBNPが高値でも心不全確定という訳ではありません。
BNPやNT-ProBNPに影響を与える因子
BNPは、DPP-4の影響を受けるのでDPP-4阻害薬を服用中患者では高く出る傾向があります。
また前述したとおり年齢や腎障害・肺疾患・女性・貧血で高値になり、肥満や心膜炎・僧帽弁狭窄症などの疾患で低値になります。
NT-ProBNPは特に腎臓の影響を受けやすいので注意が必要です。
臨床的な意義は?
僕は調剤薬局の薬剤師なので調べて知ったことしか分かりませんが、BNPとNT-ProBNPは臨床において心不全の確定診断に用いるのではなく、心疾患の可能性を確認したり、逆に肺疾患か心疾患の疑いがある際に心疾患の可能性を排除する判断材料にしたり、経時的に見ていくことで心不全の経過を確認するという使い方が多いそうです。
心臓に特異性は高いのですが、様々な要因で増減してしまうので厳密な数値である必要もなく心臓への負荷の目安という見方をするという意見もあるようです。
治療薬の増減の目安としても使えるようで、BNPが減少が薬の効いているという判断材料にもなるみたいですね。
また、BNPとNT-ProBNPは心不全の予後にも相関があると言われており、BNPが10pg/mL上昇すると死亡率が1.2%も上昇するとの報告もあります。
まとめ
・BNPの殆どは心室に由来する ・BNPの基準値は18.4pg/mLで、100pg/mLを超えてくると心不全の可能性が高い ・NT-ProBNPはBNPの前駆体で医療機関によってはNT-ProBNPが用いられる ・BNPが高い=心不全ではない ・心臓への特異性は高いが、腎障害や肺疾患でも高値になる ・NT-ProBNPは腎機能の影響を受けやすい ・心不全の可能性や経過を見ていく上で重要な検査項目である
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