2019年に発売した新しい心不全治療薬のコララン。
βブロッカーなどを用いても思うような改善をしない患者に投与される薬剤で、使用に注意が必要ですので今回はコラランについてまとめていこうと思います。
作用機序
コラランの作用機序はHCNチャネル遮断薬です。
HCNチャネルを遮断することで活動電位の拡張期脱分極における立ち上がり時間を遅延させて心拍数を減少させます。
*HCNチャネル=過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル
適応
洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
患者の背景
上記にあるようにコラランは原則βブロッカーによる治療を行っていない患者には投与出来ません。
更に添付文書には「β遮断薬の最大忍容量が投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者に投与する事」という記載があります。最大忍容量は個人で違うので必ずしもその薬剤の最大量の投与である必要はありません。
<Point>
ここで薬剤師として注意したいのが、「そもそも忍容性がない」「禁忌である」などの理由でβ遮断薬が投与出来ない患者はβ遮断薬による治療を行っていなくても例外的に使用することが出来るので「β遮断薬が使われてないから駄目だ!」とならないようにしましょう!
頻脈性の不整脈には要注意?
コラランはリズムコントロールをするのではなく、レートコントロールをする薬剤ですので洞結節機能に支障をきたした頻脈性不整脈の心拍数を低下させる期待は出来ないので注意が必要です。
用法用量
成人にはイバブラジンとして、1回2.5mgを1日2回食後経口投与から開始する。開始後は忍容性をみながら、目標とする安静時心拍数が維持できるように、必要に応じ、2週間以上の間隔で段階的に用量を増減する。1回投与量は2.5、5又は7.5mgのいずれかとし、いずれの投与量においても、1日2回食後経口投与とする。なお、患者の状態により適宜減量する。
目標とする安静時心拍数は50~60回/分とし、安静時心拍数が60回/分を超える場合は段階的に増量、安静時心拍数が50回/分を下回る又は徐脈に関連する症状(めまい、倦怠感、低血圧等)が認められた場合は段階的に減量する
禁忌
1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 2 不安定又は急性心不全患者[病態が悪化するおそれがある。] 3 心原性ショックの患者[循環動態が悪化するおそれがある。] 4 高度の低血圧患者(収縮期血圧が90mmHg未満又は拡張期血圧が50mmHg未満)[血圧が低下するおそれがある。] 5 洞不全症候群、洞房ブロック又は第三度房室ブロックのある患者(ペースメーカー使用患者を除く)[症状が悪化するおそれがある。] 6 重度の肝機能障害(Child-Pugh C)のある患者 7 次の薬剤を投与中の患者:リトナビル含有製剤、ジョサマイシン、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、コビシスタット含有製剤、インジナビル、ボリコナゾール、ネルフィナビル、サキナビル、テラプレビル 8 妊婦又は妊娠している可能性のある女性 9 ベラパミル、ジルチアゼムを投与中の患者
ベラパミルやジルチアゼムは心疾患患者は服用している可能性が高いので要注意です!
併用禁忌・併用注意
抗不整脈や利尿剤など心疾患に用いられる薬剤と併用注意になっているので覚えておきましょう。
シルデナフィルはコラランのAUCを1.5倍、ベラパミルはコラランのAUCを2倍、ジルチアゼムはコラランのAUCを3倍にしてしまうので要注意です。
腎機能・肝機能
腎機能の影響
腎機能の影響については添付文書に「Cmax及びAUC0-∞は腎機能正常患者において15ng/mL及び64ng・hr/mL、重度腎機能障害者において15ng/mL及び65ng・hr/mLであった」と記載があります。
これらから腎機能による影響は殆どなさそうです。
肝機能の影響
肝機能の影響についてですが、血中濃度が大きく上昇するため重度の肝機能障害患者へは投与しないこととなっています。
軽度、中等度の肝障害患者には投与可能ですが、多少なりとも血中濃度が上昇することを留意しましょう。
食事の影響
空腹時より食後の方が血中濃度が高いです。
通常は食後に服用するので、食事なしで飲むと血中濃度が10%程度下がります。
まとめ
・コラランはHCNチャネル遮断薬 ・β遮断薬を使っている安静時心拍数75回/分以上の心不全に用いる ・そもそもβ遮断薬に忍容性が無い場合はβ遮断薬を使ってない患者にも投与可能 ・目標の心拍数は50~60回/分 ・ベラパミルやジルチアゼムとは併用禁忌 ・QT延長作用のある抗不整脈薬や利尿薬との併用注意 ・腎臓の影響は殆ど無いが、肝臓の影響はある(重度の肝障害には投与不可) ・食事の影響は少しだけある
コメント