【期待の新薬エンレスト】専門医が期待!心不全治療薬エンレスト

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医薬品

どうも、シンパパ薬剤師Kです。

最近は勉強会がリモートで行われていますね。
こんなコロナ禍の状況でも勉強会を開催してくださる関係者の皆様へは感謝感謝です。
僕はシングルファザーなので、今までの勉強会は参加できなかったのですが、リモートですと参加出来るので有難い限りです。
先日、エンレストの勉強会が開催されるという事で参加させていただきました。
Drによる症例報告やエンレストへのご意見を拝聴出来たのでとても有意義な勉強会でした。
最近うちの薬局でも取り扱いを始めたので、僕の知っている範囲で解説しようと思います。

エンレストの増量や切り替えなどの注意事項についてはこちらで分かりやすくまとめています。
よろしければこちらも併せてご覧ください。

エンレストとは

エンレストは2020年6月ノバルティスファーマから発売された心不全治療薬です。
すでに海外では発売されている薬で、既存の心不全治療の選択肢を広げる薬として注目されています。
日本国内の適応は慢性心不全で細かな病態の指定はありませんが、海外では発売時、左心機能が低下している心不全(HFrEF)のみの適応となっていました。
その理由は、PARADIGM-HF試験でHFrEFには効果を示しましたが、右心機能不全であるHFpEFには効果を示さなかったためです。

ARNIという新しい機序

エンレストはARNI(アーニィ)という、新しい機序のお薬です。
一般名はサクビトリルバルサルタンナトリウム水和物です。

見覚えのあるものが途中にありますね(笑)
お察しの通りARBのバルサルタンも含まれている薬剤です。

一緒に含まれているサクビトリルは、ネプリライシンを阻害することで内因性ナトリウム利尿ペプチドの分解を抑制します。分解が抑制されて内因性ナトリウム利尿ペプチドの効果が増強され、利尿作用や血管拡張作用を示します。

既に心不全治療でよく用いられるバルサルタンの効果も併せ持つ事で、より効果が期待された薬剤となっています。

用法用量

高血圧に適応が追加されました。
用法は心不全と異なるので注意が必要です。
高血圧に使う際の注意事項なども纏めていますので下記をチェックしてください。

エンレストは第一選択薬ではないので、ACE阻害薬かARBからの切り替えである必要があります。

K
K

ACE阻害薬からの切り替えの際は最後にACE阻害薬を飲んでから36時間以上空ける必要があります。これは血管浮腫を回避するためです。

これは知っていないと患者さんに指導し忘れてしまうかもしれないので注意です。

開始量は通常、1回50㎎1日2回経口投与で、忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200㎎まで増量します。
1回投与量は50㎎、100㎎、200㎎とし、いずれの投与量においても1日2回は変わらずです。
この増量の際の調剤に注意が必要です。

規格は50㎎錠、100㎎錠、200㎎錠の3つあるのですが、

100㎎、200㎎投与時に50㎎錠を使うことはできません
50㎎錠は100㎎錠、200㎎錠に対する生物学的同等性がないからだそうです。
2021年秋に50mg錠の100mgと200mg錠に対する生物学的同等性が確認できたため投与可能になりました。

100㎎錠を半錠にして50㎎、2つで200㎎とするのはOKとの事なので100㎎錠があれば基本的に対応出来ます。
余談ですが、うちの薬局は増量時の処方箋が200㎎錠で来たので、患者負担も考慮し200㎎錠も買いました。僕は在庫担当なので、この100㎎錠どうしようかと悩んでおります。。

禁忌・注意事項

禁忌は下記のとおりです。

1、本剤の成分に対して過敏症の既往歴
2、ACE阻害薬投与中の患者、あるいは投与後36時間以内の患者
3、血管浮腫の既往歴
4、アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者
5、重度の肝障害
6、妊婦、または妊娠している可能性のある女性

ARBとの併用(バルサルタンの増量とか)はOKだけど、ACE阻害薬との併用はNG
元々、ARBとACE阻害薬は併用注意ですが禁忌ではありません。
エンレストの増量時の基準として腎機能や血清K値が設定されてますので、併用禁忌にされているのは、腎障害や高K血症のリスクが問題なんじゃないかと考えられます。(個人的な考えですが。。。)

主な注意事項は下記のとおりです。

1、低血圧の恐れ
2、肝機能検査を行うなど肝機能を十分に観察する
3、脱水のおそれ
4、手術前24時間は投与しないほうが良い
5、高所作業や運転をする際は注意させる
6、増量には腎機能と血清K値の基準がある

副作用

エナラプリル対象群と比較している国内第Ⅲ相試験の結果から抜粋します。
エンレスト群の副作用発現率は51.35%で、エナラプリル群の副作用は31.25%でした。

エンレスト群の主な副作用は、低血圧17.12%高K血症7.21%腎機能障害6.31%浮動性めまい4.5%でした。
これらの他にエンレストの有害事象で多く見られたのは上咽頭炎47.3%です。
添付文書に「舌、声門、喉頭の腫脹等を症状として、気道閉塞につながる血管浮腫があらわれることがある」という記載があるので、これによるものではないかと思います。
服用中の患者さんにはこれらの症状をしっかり伝えて、症状の発現があれば教えていただくように指導が必要ですね。

K
K

喉の痛みがあってもエンレストとは関係ないと思って話してくれないかもしれません。事前に上咽頭炎の症状があらわれる可能性を伝えておきましょう。

エナラプリルと比較した効果

国内臨床試験や海外における臨床試験では、心血管死や心不全による入院をエンドポイントに設定した結果、エナラプリルよりエンレストが優れていると報告されています。

更にエンレストは、エナラプリルに比べて併用している利尿薬を多く減量させ、eGFRも高く保つことも報告されています。

また、2剤とも血圧がある程度高く保たれている患者の方が予後が良いそうです
血圧があまり高くないと薬剤の増量もできないため、収縮期血圧が110程度あると心不全の治療がし易いと仰る先生もいました。

副作用も多く、注意事項が多い印象ですがエンレストに忍容性さえあれば高い治療効果を期待できますね。
既存の治療で思うような経過を辿っていない患者さんに光を示す存在になるのか、エンレストに期待したいですね。

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