どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今回は薬の比較ではなくインスリン療法についてまとめていこうと思います。
インスリン分泌について
インスリン分泌は、空腹時の血糖調節を行っている基礎分泌と、食後化血糖を抑えるための追加分泌があります。
一型糖尿病では、インスリン分泌機能が高度に低下している為、基礎分泌と追加分泌ともに低下しています。この状態を「インスリン依存状態」と呼び、インスリン療法の絶対的適応となります。
二型糖尿病では、食後のインスリンの分泌が遅れ食後化血糖が生じることから始まり、徐々に分泌量が低下して高血糖が蔓延するようになります。
この場合、インスリン注射は生命維持に必須ではないため、経口糖尿病治療薬が優先されるケースが多いです。
重度の肝・腎機能障害の場合や妊娠時はインスリン療法が絶対的な適応となる。
インスリン療法の適応
インスリン療法には患者の背景から適応すべきか判断する必要があります。
抗GAD抗体を測定することでインスリン導入の判断が出来ます。
抗GAD抗体が陽性(10U/mL以上)の場合はインスリン導入が必要です。
インスリン療法の絶対的適応
・インスリン依存状態
・アシドーシスなどの高血糖による昏睡
・重度の腎障害
・重度の肝障害
・重症感染症
・外傷・中等度の外科手術
・妊婦の糖尿病
・静脈栄養時の血糖コントロール
インスリン療法の相対的適応
・二型糖尿病の高度な高血糖状態
・経口糖尿病治療薬で血糖コントロール不良の患者
・やせ形で栄養が不足している患者
・ステロイド内服による高血糖
・糖毒性の解除目的
糖毒性とは
糖毒性とは、過度な高血糖状態が続くと、インスリンの分泌も感受性も異常に低下してしまう状態の事をいいます。
普通に経口糖尿病治療薬で治療を行ってもこの糖毒性のせいで思うような効果は得られません。
インスリン注射でインスリンを体内に入れることで膵臓が休まり、糖毒性を解除する事ができます。
強化インスリン療法(BBT)
強化インスリン療法とは、1日1回の持続型インスリン製剤を基礎分泌の代わりとして、毎食直前に超即効型インスリン注射薬を追加分泌の代わりに注射する方法です。
この方法は名前の通り強力な血糖降下を期待できる方法ですが、1日4回の注射が必要となるため患者のコンプライアンスが悪くなりがちでQOLも低下してしまう恐れがあります。
高齢患者さんだと注射を間違えるリスクもあります。
強化インスリン療法を適応する患者
・インスリン絶対的適応患者
・インスリン相対的適応患者の糖毒性の解除目的 など
BOT(Basal supported Oral Therapy)
BOTとは、経口糖尿病治療薬を服用している患者に1日1回の持続型インスリン製剤を追加して治療を行う方法です。
1日1回の注射なので、時間帯も患者のライフスタイルに合わせて選べる為、導入しやすいです。
BOTのメリットは、1日1回のインスリン注射で血糖が低下する事だけでなく、SMBG(血糖自己測定)が保険適応で使えるようになることも挙げられます。
また、急激な血糖低下作用があるわけではないので低血糖のリスクも高くありません。
BOTでの血糖改善には限界があり、HbA1cを7%台にするのがやっとです。
それ以上の血糖改善が必要な場合は、追加で短時間型のインスリン製剤の使いも検討されます。
混合型インスリン製剤を1日2回
この方法は、昔から広く使われてきた方法ですが、BOTに比べて細かい調節がしにくい事と、結局強化インスリン療法に切り替わることが多いという背景もあって、使われることが減ってきているそうです。
メリットは、同じ注射を1日2回打つので薬の取り違えがないという点です。
朝夕の2回なので昼食後の高血糖が気になる場合は、昼食時だけ超即効型インスリン製剤か内服薬を追加してコントロールすることも可能です。
GLP-1受容体作動薬
最近では、GLP-1受容体作動薬の登場でBOTなどの治療で思うような血糖降下が現れなかった場合の選択肢が増えています。
他のインスリン製剤を追加する場合、注射のタイミングが1日1回から2回3回と増えていってしまいますが、GLP-1受容体作動薬なら、持続型インスリン製剤と同じタイミングに使えるので注射のタイミングを増やす必要がありません。
更に、肥満体型の患者さんには体重の減量も期待できます。
デメリットはGLP-1受容体作動薬はインスリン注射に比べて高価な事です。
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