【選択的尿酸再吸収阻害薬】ユリスとベンズブロマロンを比較!治療効果やトランスポーターについて。

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医薬品

どうも、シンパパ薬剤師Kです。

門前でユリスが採用されたという事で、僕が真っ先に思ったことは「ブログのネタだ」でした(笑)
比較対象であるユリノーム(ベンズブロマロン)と比較しながらユリスについて見ていきましょう!

ユリスの基本情報

ユリスは、尿酸トランスポーターであるURAT1を選択的に阻害して尿酸の再吸収を阻害することで尿酸排泄を促進する高尿酸血症の治療薬です。
1日1回で、開始量から維持量へ徐々に増量していく薬です。
併用禁忌はなく非常に使いやすそうな印象を受けます。

尿酸トランスポーター

ユリスは、URAT1を選択的に阻害するという事は、他にも尿酸トランスポーターがあるという事ですね。
同じく尿酸トランスポーターを阻害することで尿酸排泄を促進するユリノームは、URAT1の他にABCG2やOAT1,OAT3なども阻害します。
このトランスポーターは、再吸収ではなく排泄に関わるトランスポーターなので阻害すると尿酸が出て行きにくくなってしまいます
そのことからユリスは再吸収に関与するURAT1だけを阻害することでより高い効果が期待できる作りになっています。

ユリスの特徴

・1日1回服用のURAT1選択的阻害
 →1日1回0.5㎎から開始し2週間以上の間隔をあけて1日1回1mgに増量、投与開始から6週間以上あけて1日1回2㎎に増量し2mgを維持量とする。1回4㎎まで増量可能。
・肝障害、腎障害でも使える
・肝障害時・腎障害時にはCmaxとAUCが少し低下する
・食事の影響なし
・併用禁忌なし
・禁忌が過敏症のみ

ユリノームとの比較

・ユリノームは1日1回25~50㎎で開始し、1日1~3回50~150㎎を維持量とする。
・ユリノームは肝障害には禁忌ユリノームには劇症肝炎のイエローレターがでている
・副作用の報告はどちらも多くない
・ユリノームはCYP2C9が関与する

ユリノームはユリスと異なり肝障害に対して禁忌です。
劇症肝炎のイエローレターが出ているのもあり、肝機能に関してはかなり注意して経過を観察する必要があります

ちょっと使いづらそうに見えるユリノームですが、実は副作用の発生頻度は低いんです。
製造販売後調査での副作用は僅か2%で、痛風性関節炎は0.11%だけでした。
ユリスも副作用は少なそうなので、副作用の発現頻度には大きな差はありません。

ユリノームはCYP2C9で代謝されて、CYP2C9を阻害します
ユリスの代謝にCYPは大きく関与しません。

血清尿酸値6.0未満達成率

ユリスとベンズブロマロンの血清尿酸値6.0未満達成率を用量別に表にしてみました。

ユリスは4mgまで増量しないと80%を超えてきませんでしたが、ユリノームは50㎎以上で高い達成率を示しました。
このデータを見ると「ユリスの方が強い」という感じはしませんね。

トランスポーターへの選択性

トランスポーターへの選択性もグラフにしてみました。
URAT1のIC50を1とした時の他のトランスポーターのIC50を指標にしているので、グラフが長いトランスポーターは阻害されにくいという事を表しています。

ベンズブロマロンはABCG2に対して結構しっかり作用します。
対してユリスは圧倒的なURAT1選択性ですね。

尿酸排泄に関したABCG2の役割

そもそもABCG2ってどこまで尿酸の分泌に関わっているの?って思いません?
近位尿細管における尿酸分泌と、腸管における糞中分泌に関与しています。
なので、ABCG2は阻害せずURAT1だけを阻害すれば高い効果を期待できるんじゃない?って話なんですが、ABCG2自体は尿酸値に大きく影響するほど寄与していないんじゃないかって仮説を立てて考えてみたんですね。
さっきの血清尿酸値6.0未満達成率のグラフですが、ユリス4㎎以外はユリノームの方が達成率高かったですよね。
IC50のグラフを見るとわかる通り、ユリノームは結構ABCG2を阻害しているのにも関わらずですよ。
ABCG2の阻害が尿酸値に大きく関与しているのであれば、ユリノームの治療効果はユリスの治療効果に比べてもっと悪くなりそうですがそんなことありません。

血液透析患者と健常者を対象にABCG2阻害における尿酸値の変化をみた試験では、透析患者群はABCG2の阻害によって尿酸値は上昇したが、健常者群ではABCG2の阻害による尿酸値に有意な差はなかったそうです。
今のところ出ているデータだけをみると、ユリノームのABCG2阻害は問題になるほど尿酸排泄に影響が出ていないのではないかと考えられますよね。
なので仮説は正しいかもしれないです。

超個人的な考察

元々、尿細管でURAT1によって尿酸は9割も再吸収されていて、尿酸排泄におけるトランスポーターの寄与はURAT1が圧倒的なわけです。
尿酸は糞中にも排泄されるんですが、糞中2割・尿中8割くらいの比率です。
尿中8割のうち、9割がURAT1に再吸収されるとすると全体の72%もURAT1が再吸収しちゃうんですよ。つまり、他のトランスポーターの働きが多少悪くなっても全体的にはあまり影響がないんじゃない?ってレベルでURAT1のワンマンなんですね。
そこに選択性を持たせても、治療効果にはそんなに影響ないんじゃない?って思っています。

そんなことよりも、「肝臓に障害があっても使えること」とか「増量後も1日1回で良い」とか「CYPの影響がほとんどない」とかそういったところにこの薬の良さがあるんじゃないかと考えています。

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