去年あたりからSGLT-2阻害薬の適応が広がり注目を集めていますよね。
特に心不全治療の新たな選択肢として、多くの専門医が注目しているようです。
ただ「どういう機序、理由で効果があるのか」という事がよくわからなかったので少し調べてみました。
腎臓や心臓に対する明確な機序は分かっていない
慢性腎臓病と心不全に適応を持つSGLT-2阻害薬であるフォシーガ(ダパグリフロジン)の添付文書の作用機序を見ると、、
・慢性心不全 ダパグリフロジンの慢性心不全に対する薬理作用には、SGLT2阻害による浸透圧性利尿作用及び血行力学的作用に加えて、心筋線維化への二次的作用が関連している可能性がある。また、NLRP3依存性インフラマソームの活性化に対するダパグリフロジンの抑制作用が、心室への有益な作用をもたらす機序の一部である可能性が示された。 ・慢性腎臓病 ダパグリフロジンの慢性腎臓病に対する薬理作用には、SGLT2阻害により、遠位尿細管に到達するナトリウム量が増加し、尿細管糸球体フィードバックが増強されることで糸球体内圧が低下することが関連している可能性がある。また、上記の作用が浸透圧利尿による、体液過剰の補正、血圧低下、前負荷及び後負荷の軽減等の血行動態の改善作用と組み合わさって、腎灌流を改善することが関連している可能性がある。
「多分こういう作用だよな」という可能性が分かっているだけで明確に分かっているわけではなさそうです。
推察されている作用機序
添付文書で示唆されている機序を簡単にまとめると、心臓に対しては線維化の抑制とインフラマソームの活性抑制による心室への有益作用で、腎臓に対しては糸球体内圧低下と腎灌流改善による腎負担軽減ってところでしょうか。
少し調べるとこれらの機序以外の可能性を示唆されている考察がいくつかあったので、自分の中で腑に落ちたものを少し紹介したいと思います。
なお、個人的な見解になるので参考程度に考えていただけると幸いです。
グルカゴンの心筋に対する陽性変力作用
血糖関連で重要なホルモンであるグルカゴンですが、どうやらグルカゴンは心筋に良い影響を与えて心不全の改善に一役買ってくれるようです。
SGLT-2阻害薬の投与で糖の排泄が増加することでグルカゴンが分泌されるので、それが心不全に良い影響を与えているという事であれば納得できますよね。
NOXの抑制
NADPH oxidase(NOX)は臓器障害の惹起に関与するROSの産生に関与していると言われています。
SGLT-2阻害薬はNOX発現を抑制することが知られており高血糖に惹起されるROS産生を抑制するので腎臓と心臓どちらにも良い影響を与えるのではないかと予想されています。
まとめ
・SGLT-2阻害薬は慢性腎臓病と慢性心不全 ・腎臓と心臓への明確な作用は分かっていないが症状を改善することは分かっている ・心臓に対しては線維化の抑制とインフラマソームの活性抑制による心室への有益作用が考えられる ・腎臓に対しては糸球体内圧低下と腎灌流改善による腎負担軽減が考えられる ・その他にグルカゴンの陽性変力作用とNOXの抑制が症状改善に関与している可能性もある
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