どうも、シンパパ薬剤師Kです。
今回はスタチンの血糖上昇について気になったので、調べたことについてまとめていきます。
アトルバスタチンの重要な副作用に高血糖
脂質異常症に多く用いられているスタチン系ですが、スタチンの投与による血糖上昇は薬剤師の皆さんには良く知られたことだと思います。
その中でも重要な副作用として添付文書に記載があるのがアトルバスタチン(リピトール)です。
その為、糖尿病患者に対してはアトルバスタチンばかりが注目されています。
ですが糖尿病患者に注意すべきはアトルバスタチンだけではないという事が分かっています。
糖尿病になるリスクは軽視すべきではないですし、脂質異常症の患者さんは血糖値が高めの事が多いと思われますのでリスクとベネフィットを考慮する必要があると考えています。
アトルバスタチン以外のスタチン系の高血糖
ではどのスタチンが血糖に強く影響するのか、またどのスタチンが血糖への影響が少ないのかいくつかの文献を参考にしてまとめてみます。
カナダオンタリオ州における糖尿病を発症していない人を対象としたコホート研究では、プラバスタチンを基準としてスタチンの糖尿病発症リスクを比較したデータがあります。
このデータを見るとプラバスタチンより糖尿病発症リスクが高いのは、アトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンで、フルバスタチンはプラバスタチンと同等だという結果でした。
ピタバスタチンの血糖への影響を示唆するデータは非常に少なく、影響が殆ど無いとするものもあればアトルバスタチンより若干HbA1cが低かったとするデータもあるので「添付文書に具体的な記載が無いから血糖への影響が無い」とすることは出来ないと思います。
果たして本当にスタチン系は血糖へ影響を与えるのか?
これらのデータを見ていて思ったのが「スタチン云々の前に、そもそも脂質異常症の患者は血圧や血糖に異常が出る生活をしているだけじゃ??」という事です。
実際にロスバスタチンの糖尿病発症リスクを検討した研究では、糖尿病危険因子を有する人と有しない人で分けたデータがあります。
このデータでは危険因子を有しない人の場合はロスバスタチンもプラセボも糖尿病発症に有意差が無く、危険因子が一つでもある人の場合はロスバスタチンの方が糖尿病発症リスクが高い事が示唆されています。
さらに日本での用量を超えた高用量のスタチンと通常量のスタチンで糖尿病発症リスクを比較したデータでは少しだけだが高用量の方が糖尿病発症リスクが高い事も分かっています。
これらの事から「糖尿病の危険因子を持つ患者へスタチンを投与することは糖尿病発症リスクにつながる」と考えられる訳です。
血糖への影響が大きい薬剤と小さい薬剤
いくつかのデータから糖尿病発症リスクの高い薬剤はアトルバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンで、その中でもやはりアトルバスタチンが一番強く血糖に影響を与えると考えられます。
比較的糖尿病発症リスクが低いのはフルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチンだと考えられます。
糖尿病発症リスクが高いスタチンは糖尿病患者に使わないほうが良いのか
今までの話から「じゃあ糖尿病患者にはスタチンは使わずフィブラート系使うべき?」という疑問も出てきます。
糖尿病発症や血糖異常は軽視して良い訳ではありませんが、スタチン系を投与することで得られるメリットも大きいというのも事実です。
臨床においてスタチンによる糖尿病発症の頻度は決して高い訳ではありません。
現状、リスクに対してベネフィットの方が高いので糖尿病発症リスク回避を理由にスタチンの投与を避けるというシビアな選択を取る必要はないと個人的には考えています。
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